ビジネスを壊すのは失敗ではなく「ブレ」である。停滞の本当の原因とは?

こんにちは。スギムーです。(@sugimu331

日本思想×ビジネスの翻訳家/ビジネスコンサルタント歴20年/株式会社ウェブロック代表/SoulWork主宰/中小企業から上場企業、IT・音楽業界・店舗ビジネス・BtoBまで幅広く経験。200件以上のプロジェクトに参加。ビジネスの相談件数は数千件。ブログ年100万PV突破。金儲け主義に違和感のある起業家に向けて、三方よしの日本的起業家精神とスモールビジネスの原理原則を伝えるオンライン講座「月刊ソウルワーク」を運営(運営歴1年/累計販売数1000件突破)しています。

私は20年以上、起業家や経営者のコンサルティングをしてきました。その中で、業績が悪くなっていく会社を見ていると、かなり共通したパターンがあります。

もちろん、ビジネスをしていれば外部環境は常に変わります。

  • 景気が悪くなる。
  • 市場が縮小する。
  • 競合が増える。
  • 広告費が高騰する。
  • 顧客のニーズが変わる。
  • 優秀な社員が辞める。
  • それまで売れていた商品が売れなくなる。

こうしたことは普通に起きます。

しかし、同じような環境変化が起きても、その『後』が問題です。

状況を冷静に見て、原因を特定して、必要な対策をして立て直す起業家もいます。

一方で、売上が落ちたことをきっかけに、

  • 値下げをする。
  • 広告を増やす。
  • 商品を増やす。
  • ターゲットを広げる。
  • 新規事業を始める。
  • 今までとは全く違う方向へ進み始める。

そして、さらに業績を悪化させるビジネスもあるわけです。

20年以上、経営の現場を見てきましたが、ビジネスが大きく崩れる時には、外部環境の変化そのものよりも、その変化に対して行った経営判断によって、自ら状況を悪化させているケースが非常に多いのです。

景気が悪くなったから会社が潰れるわけではありません。
景気が悪くても生き残る会社はあります。
競合が増えたから会社が潰れるわけでもありません。
競合が増えても成長する会社はあります。
市場が変化することも同じです。

問題は、

その時に何を見て、何を考え、どんな判断をするか。

つまり、

ダメになるビジネスの多くは、外部から壊されるのではなく、自分たちで自滅しているのです。

■売上が落ちた時、起業家の中で何が起きるのか?

例えば、毎月1000万円あった売上が、700万円まで落ちたとします。
300万円の売上減です。

これは単なる事実です。

本来なら、

「なぜ300万円落ちたのか?」

を調べればいい。

新規客が減ったのか。
リピート率が落ちたのか。
客単価が下がったのか。
特定の商品だけ売れなくなったのか。
競合に顧客が流れたのか。
市場そのものが縮小したのか。

数字を見て原因を探し、必要な対策をすればいいわけです。

ところが、

実際に自分の会社の売上が落ちれば、当然、感情も動きます。

「怖い」
「このままで大丈夫か?」
「何とかしないと」

と思う。

ここまでは普通です。

問題は、その後です。

「このままでは会社が終わる」
「今の商品ではもうダメだ」
「早く取り返さなければ」
「自分のやり方が間違っていたのかもしれない」

と解釈し始める。

すると、

  • 焦って値下げする。
  • 利益が減っているのに広告費を増やす。
  • 新しい商品を次々に投入する。
  • 今まで対象にしていなかった顧客まで追いかける。
  • 流行っているマーケティング手法へ飛びつく。
  • 方向性そのものを変えてしまう。

一つひとつを見ると、それなりに理由のある経営判断に見えます。

しかし、なぜその判断をしたのかを遡っていくと、

最初にあったのは、

「売上が300万円落ちた」

という会社の問題だったはずです。

ところが途中から、

「怖い」
「失敗したくない」
「早く取り返したい」

という、

自分自身の感情の問題に変わっている。

会社の問題を解決していたはずなのに、いつの間にか、自分の不安を消すことが目的になっている。

ここから経営はブレ始めます。

■感情に振り回される時は、感情を「事実」に変えている

ここで、

「感情的になってはいけない」

という話ではありません。

そんなの無理です。

売上が半分になったら怖いでしょう。
大きな投資に失敗したら落ち込みます。
一生懸命作った商品を否定されたら腹も立つ。
競合が急成長したら悔しい時もある。

逆に、

大成功すれば嬉しいし、
褒められれば気分も良くなります。

感情があるのは当然です。

問題は、

感情と事実を混同することです。

 

例えば、

「怖い」というのは感情です。
「だから、この事業は危険だ」というのは解釈です。

この二つは違います。

「競合に負けた気がする」は解釈です。
「競争上、自社が不利になった」は事実です。

「この商品を批判されて腹が立った」は解釈ですが、
「こういう顧客の意見がある」は事実。

ところが感情が強くなると、

この境目が消えます。

「怖い」から、「危険だ」になる。
「悔しい」から、「負けている」になる。
「腹が立つ」から、「相手が間違っている」になる。

そして、その解釈を前提に経営判断を始めます。

2000年ほど前のストア派の哲学者エピクテトスは、

「人を悩ませるのは物事ではなく、物事についての見方である」

という趣旨のことを述べています。

ずいぶん昔から、人間は同じところでつまずいているわけです。

現代の経営研究でも、似た現象は確認されています。

1976年、組織行動研究者のバリー・ストーは、企業の投資判断を模した実験を行いました。

その結果、自分が決めた投資が悪い結果を出した人ほど、その投資にさらに資金を追加する傾向が確認されました。

普通なら、失敗しているならやめればいい。

でも、「自分が決めた」となると話が変わります。

事業をやめることが、「この事業はうまくいかなかった」ではなく、「自分が間違っていた」という話になるからです。

だから、

「ここまでお金を使ったんだから」
「もう少しやれば結果が出る」
「市場がまだ理解していないだけだ」
「今やめたら全部無駄になる」

と、

続ける理由を探し始める。

本人は冷静に分析しているつもりです。

でも実際には、

自分の間違いを認めなくて済む理由を探している。

これが怖いところです。

■ビジネスで人がブレる心理メカニズム

つまり、人がブレて自滅する時には、だいたいこういうことが起きています。

何か出来事が起きる。

感情が生まれる。

その感情から解釈を作る。

解釈を事実だと思い込む。

そこに執着する。

判断基準が変わる。

行動が変わる。

結果が悪くなる。

例えば、

売上が落ちた。

怖い。

「このままでは終わる」

「何としても売上を戻さなければ」

値下げ。
広告増加。
商品追加。
方向転換。

という流れです。

競合が成功した場合も同じです。

競合が急成長した。

悔しい。

「自分は負けている」

「勝たなければ」

競合を真似する。
自社の強みを捨てる。
無理に事業を拡大する。

批判された時も同じです。

商品を批判された。

腹が立つ。

「こいつは分かっていない」

「自分が正しいことを証明したい」

顧客の意見を聞かなくなる。
批判する社員を遠ざける。
自分に賛成する人だけを周囲に置く。

そして、

成功した時にも同じことが起きます。

商品が大ヒットする。

嬉しい。

「自分の判断は正しい」

「俺には経営センスがある」

「もっとやればもっといける」

人を増やす。
固定費を増やす。
新規事業を増やす。
周囲の忠告を聞かなくなる。

失敗した時だけ人はブレるのではありません。

成功による自信や高揚感も、人をブレさせます。

良い出来事でも、悪い出来事でも、自分の感情から作った解釈を、現実そのものだと思い込めば同じなのです。

■仏教では、この状態を「無明」と考える

ここまでの話は、実は仏教では2500年近く前から扱われています。

仏教には、「無明」という言葉があります。

無明というと、

「知らない」
「知識がない」

という意味に見えます。

でも、単純に勉強不足という話ではありません。

経営の原理原則を知っていても、自分の会社の売上が半分になった瞬間、恐怖に支配されれば判断を間違えます。マーケティングを知っていても、自分の商品が売れなくなったら、焦って値下げするかもしれない。投資について勉強していても、実際に自分のお金が減れば、怖くなって判断を誤るかもしれません。

つまり、

知っていることと、正しく観られることは違うのです。

何か出来事が起きた時に、

自分の恐怖や、
怒りや、
欲や、
プライドや、
過去の成功体験を通して世界を見るのか。

それとも、

「自分はいま怖がっている」
「自分はいま勝ちたいと思っている」
「自分はいま正しさを証明したくなっている」

一度自分を外から見て、
事実を事実として観ることができるのか

この違いです。

仏教では、

何かに触れて、
快・不快が生まれ、
それを求めたり避けたりし、
最後にはそれを握りしめて執着する、

という人間の心の流れを説明しています。

つまり、

感情が生まれることそのものが問題なのではありません。

 

 

その感情から作った解釈を、
「これが現実だ」
と握ったところから、現実が見えなくなる。

 

 

これが無明です。

■ブレるとは「判断基準」が変わることである

だから、

私が言う「ブレる」というのは、
戦略を変更することではありません。

市場が変われば戦略は変えればいい。
顧客が変われば商品だって変えればいい。
方法は柔軟に変えていいんです。

問題は、

何を基準に判断しているか?

です。

本来は、

「顧客にとって何が必要か?」
「この会社は何をするべきか?」
「何のためにこの事業をやっているのか?」
「長期的に何が正しいのか?」

という基準でビジネスをしていたはずです。

ところが、

何かが起きた瞬間、

「損したくない」
「負けたくない」
「失敗したくない」
「恥をかきたくない」
「間違っていたと認めたくない」
「成功者だと思われたい」

に判断基準が変わる。

これが、

ビジネスにおける「ブレ」です。

つまり、

ブレとは感情が動くことではありません。

判断基準が「事業の目的」から「自分を守ること」へすり替わることです。

そして自分自身は、

その変化になかなか気づきません。

自分ではビジネスのために判断していると思っている。

しかし実際には、

ビジネスを使って、
自分の不安を消し、
自分のプライドを守り、
自分の損を取り返し、
自分の正しさを証明しようとしている。

これでは、適切なビジネス判断はできません。

では、

同じように怖くなり、
腹も立ち、
成功すれば調子にも乗る、

同じ人間なのに、

なぜ大きくブレずにビジネスを続けられる人がいるのでしょうか?

彼らは、
メンタルが強いのでしょうか?
頭がいいのでしょうか?
客観視する能力が高いのでしょうか?

実は、ブレないように見える人も、
普通に感情的になって、ブレています。

違うのは、

ブレても戻って来られることです。

では、

なぜブレた状態から戻って来られるのか?

次回に続きます。

 

ではでは!

 

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杉村崇 takashi sugimura

日本思想×ビジネスの翻訳家。ビジネスコンサルタント歴20年。株式会社ウェブロック代表。IT・音楽業界・店舗・中小企業・個人から上場企業まで経験。ブログ年間100万PV突破。金儲け主義に違和感のある起業家へ、“三方よし”の日本的起業家精神とスモールビジネスの学びを提供

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