正しい判断力より「間違いに気づく仕組み」がビジネスに必要な理由

こんにちは。スギムーです。(@sugimu331

日本思想×ビジネスの翻訳家/ビジネスコンサルタント歴20年/株式会社ウェブロック代表/SoulWork主宰/中小企業から上場企業、IT・音楽業界・店舗ビジネス・BtoBまで幅広く経験。200件以上のプロジェクトに参加。ビジネスの相談件数は数千件。ブログ年100万PV突破。金儲け主義に違和感のある起業家に向けて、三方よしの日本的起業家精神とスモールビジネスの原理原則を伝えるオンライン講座「月刊ソウルワーク」を運営(運営歴1年/累計販売数1000件突破)しています。

前回は、ビジネスがダメになる大きな原因は、

景気でも、
競合でも、
市場の変化でもなく、

その変化をきっかけに判断がブレて、自滅することにある

という話をしました。

売上が落ちる。
競合が増える。
市場が変わる。

そうした出来事で不安や焦りが生まれ、
その感情から作った解釈を事実だと思い込み、

「顧客にとって何が必要か」
「このビジネスは何をするべきか」

ではなく、

「失敗したくない」
「負けたくない」
「損を取り戻したい」

という自己保身を基準に判断し始める。

これが、

ビジネスにおける「ブレ」です。

では、

どうすればブレなくなるのでしょうか?

正しい経営判断を学べばいいのでしょうか?
優秀なコンサルタントから、成功する方法を教えてもらえばいいのでしょうか?
もっと知識を増やせば、判断を間違えなくなるのでしょうか?

そうではありません。

なぜなら、

どれだけ知識があっても、人は自分が間違っている時ほど、自分では正しいと思っているからです。

■成功する人は「正解」を知っている人ではない

20年以上、起業家やビジネスの相談を受けてきました。
その経験から言えることがあります。

成功する人は、いつも正しい判断ができる人ではありません。
普通に間違えます。

判断を誤ることもある。
感情的になることもある。
余計なことを始めることもある。

違うのは、

自分の間違いに気づいて、修正できることです。

逆に、

どれだけ頭が良くても、
どれだけ知識があっても、

間違った判断を正しいと思い続ければ、
そのまま間違った方向へ進んでいきます。

だから、

ビジネスで本当に必要なのは、

「絶対に間違えない判断力と、そのための知識」

ではありません。

そんなものはありません。

必要なのは、

間違えた時に、それに気づける仕組みです。

■自分が間違っている時ほど、自分では気づけない

例えば、

新しい事業を始めようとしているとします。

調べると、市場も伸びている。
競合も少ない。
自社の強みも活かせる。
数字を計算しても悪くない。

だから本人は、

「これはやるべきだ」

と考えています。

そこで一人でさらに考える。

市場規模を調べる。
競合を調べる。
成功事例を調べる。

すると、ますます、

「やっぱり正しい」

という結論になっていく。

しかし、そもそも、

「なぜその事業をやりたいのか?」

という前提が、

競合への嫉妬だったらどうでしょう。
売上低迷への焦りだったらどうでしょう。
今の事業から逃げたいだけだったらどうでしょう。
成功者として注目されたいという欲だったらどうでしょう。

いくら論理的に考えても、

前提そのものがズレていれば、論理的に間違った方向へ進むだけです。

しかも、

その判断をしたのも自分。
その判断が正しいか検証しているのも自分です。

これでは、

曲がった定規で、
その定規が曲がっていないかを測っているようなものです。

だから、

「もっとよく考えれば正しい答えが出る」

とは限りません。

考えれば考えるほど、

自分の思い込みを強化することさえあります。

■学ぶのは「正解を知るため」ではない

そうなると、学ぶ意味は変わってきます。

多くの人は、
正解を知るために勉強します。

成功する方法を知りたい。
売れる方法を知りたい。
集客できる方法を知りたい。

だから、

本を読む。
講座を受ける。
セミナーへ行く。
コンサルタントに相談する。

そして、

「結局、何をすれば成功するんですか?」

という答えを求める。

でも、

この学び方には大きな問題があります。

ビジネスには、
誰にでも当てはまる正解などないからです。

同じ戦略でも、
会社が違えば結果は変わります。

同じマーケティングでも、
商品が違えば結果は変わります。

同じ市場でも、
タイミングが違えば結果は変わります。

専門家の答えをそのまま採用すれば成功できるなら、
世の中は成功者だらけです。

では、

何のために学ぶのか?

自分の間違いに気づくためです。

知らなかった考え方を知る。
自分とは違う視点に触れる。
原理原則を学ぶ。
他人から指摘される。
過去の事例を見る。

そうすることで、

「自分はこれが当たり前だと思っていたけど、違うのかもしれない」

と気づく。

この瞬間に、
初めて判断を修正できます。

つまり、

知識の価値は、正解を与えてくれることではありません。
自分が正解だと思い込んでいるものを疑えるようになること、にあります。

■専門家は「答えを教える人」ではない

コンサルタントの使い方も同じです。

コンサルタントに、

「どうすれば成功しますか?」

と聞いて、その答え通りにやる。

これでは、

自分の判断に従う代わりに、
他人の判断に従っているだけです。

コンサルタントだって間違えます。
顧客だって間違えます。
データだって、
解釈を間違えれば意味がありません。

重要なのは、
誰かに正解を決めてもらうことではありません。

例えば、

「新規事業を始めたい」

と言った時に、

「なぜ今なんですか?」

と聞かれる。

「この商品を値下げしたい」

と言った時に、

「本当に価格が原因なんですか?」

と聞かれる。

「競合と同じことをやりたい」

と言った時に、

「それは顧客のためですか。それとも競合に負けたくないだけですか?」

と聞かれる。

そこで初めて、

自分では気づかなかった前提に気づくことがあります。

専門家の価値は、

必ずしも、

自分より正しい答えを持っていることではありません。

自分一人では気づけなかった間違いを、見えるようにすることです。

■優れた仕組みは「答え」を強制しない

映画製作会社のピクサーには、
「Braintrust」と呼ばれる仕組みがあります。

制作途中の作品について、
経験豊富な仲間たちが率直に意見を出し合う場です。

しかし、
このBraintrustには決定権がありません。

意見を受けた監督に、
その意見を採用する義務もありません。

最終的にどうするかは、監督自身が決めます。

ピクサー共同創業者のエド・キャットムルも、Braintrustの重要な特徴として、参加者に「権限がない」ことを説明しています。

ここが重要です。

正解を教える会議ではないのです。

「ここがおかしい」
「自分にはこう見える」
「この部分は伝わらない」

と、

自分では見えていないものを見せてもらう。

その意見を聞いた上で、
採用するかどうかは自分で決める。

これは、ビジネスでも同じです。

他人の意見に従うことが重要なのではありません。

自分の判断を、自分一人の中だけで完成させないことが重要なのです。

■答えをくれないものにも意味がある

だからこそ、
ビジネスと直接関係のない学びや習慣にも意味があります。

スティーブ・ジョブズが若い頃から禅に関心を持ち、
曹洞宗の僧侶、乙川弘文と長く交流していたことはよく知られています。

ジョブズは1970年代から乙川の禅堂へ通い、その関係は長く続きました。後には乙川がジョブズの結婚式も執り行っています。

座禅をしたところで、
次にどの商品を作るべきかなんて分かりません。

価格設定も教えてくれない。
市場予測もしてくれない。

でも、

自分の思考や感情から距離を取ることはできます。

「焦っているな」
「勝ちたがっているな」
「認められたがっているな」
「過去の成功に執着しているな」

と、

判断している自分自身を見る。

すると、

「この判断は、本当にビジネスのためなのか?」

と考え直す余地が生まれます。

別に座禅でなくても構いません。

本を読む。
哲学を学ぶ。
師から学ぶ。
仲間と話す。
専門家と対話する。
一人で振り返る。
実践して結果を見る。

重要なのは、

自分が正しいと思っている世界から、一度出ることです。

■自分で「仕組み」を壊していくメカニズム

起業したばかりの頃は、
多くの人がよく学びます。

本を読む。
人に聞く。
講座へ行く。
相談する。
顧客と話す。

何か失敗すれば、

「自分が間違っているのかもしれない」

と考える。

ところが、
このビジネスの停滞が続くと、「自分の間違いに気づく仕組み」を破壊し始めます。

成功できない。

学んでいることが間違っているのでは?

自分は悪くない

もう教わる必要はない。

人の話を聞かなくなる。

自分の判断を、自分だけで正しいと決めるようになる。

そして、新しい学び、資格や、魔法の方法を求めて、
さらにお金と時間と自信を失っていく。

成功し始めても、同じです。

成功した。

自分の考えは正しかった。

自分は分かっている。

もう教わる必要はない。

人の話を聞かなくなる。

自分の判断を、自分だけで正しいと決めるようになる。

こうして、

自分の間違いに気づく仕組みが、
少しずつ消えていきます。

失敗し続けても、
成功しても、仕組みを失えば、
自分の単独の判断に陥っていきます。

すると、

判断がおかしくなっていく。

自分を修正するものがなくなったからです。

■修正するために起業家は学び続けなければならない

京セラ創業者の稲盛和夫が始めた「盛和塾」は、1983年、若い経営者たちから、継続的に経営を教えてほしいと依頼されたことから始まりました。

そこで行われていたのは、経営哲学の学習だけではありません。

経営体験の発表や、経営問答などを通して、自分自身の経営を見直す場でもありました。

活動は36年間続き、2019年の閉塾時には、国内外で約1万5000人が参加するまでになっています。

なぜ、
すでに会社を経営している人たちが、
何年も学び続けるのでしょうか?

知らないことがあるからだけではありません。

自分は何度でも間違うからです。

人は、

成功すれば傲慢になる。
失敗すれば恐怖に支配される。
褒められれば自分を過大評価する。
批判されれば自己防衛する。

そのたびに、

現実ではなく、
自分の感情を通して物事を見るようになります。

だから、

学びに終わりはありません。
一度正解を知ったら終了ではない。
一度成功したら終了でもない。

学びとは、正解を増やし続けることではなく、自分の間違いに気づける状態を保ち続けることです。

■「自分軸」が強ければいいわけではない

最近は、

「自分軸を持て」

という話をよく聞きます。

もちろん、

理念や志を持つことは大切です。

しかし、

自分軸だけでは危険です。

なぜなら、

間違った人が強い自分軸を持ったら、強く間違えるだけだからです。

「私はこう思う」
「私はこれをやりたい」
「自分を信じる」

それだけでは、

自分の思い込みを強化する可能性があります。

必要なのは、

自分の軸を持ちながら、
それを何度も、
道理に照らし直すことです。

「私はこうしたい」

だけではなく、

「それは何のためなのか?」
「顧客にとってどうなのか?」
「長期的に見てどうなのか?」
「そもそも自分はいま、何に囚われているのか?」

と問い直す。
道理に合っているのかを確認する。

だから、

「ブレない」とは、自分の考えを変えないことではありません。

間違いに気づいたら、
ちゃんと変えられることです。

■自分の間違いに気づく「道場」を持つ

仏教には、「仏・法・僧」という三宝があります。

「法」とは、
自分の都合とは関係なく存在する道理。

「僧」とは、
一人で自分の認識世界に閉じないための、
師や仲間や共同体です。

そして、
仏道を学び、
修行し、
自分を磨いていく場所を、

「道場」と呼びます。

道場というと、
今では柔道や剣道をする場所を思い浮かべるかもしれません。

でも、
本来の意味を考えれば、
ビジネスにも道場が必要です。

寺に行けという話ではありません。

自分の間違いに気づき、修正し続ける場所を持つということです。

それは、

講座かもしれない。
師かもしれない。
専門家かもしれない。
仲間かもしれない。
読書かもしれない。
座禅かもしれない。
実践そのものかもしれない。

大切なのは、
そこで正解をもらうことではありません。

自分が正しいと思い込んでいるものを、何度も壊してもらうことです。

人は、
一度学んだからブレなくなるのではありません。

人間である以上、

何度でもブレます。

だから、

何度でも自分の間違いに気づき、
何度でも修正する。

成功する人は、
いつも正しい人ではありません。

自分の間違いに気づいて、修正できる人です。

だからビジネスに必要なのは、
正しい答えを知ることより、

「自分は間違っているかもしれない」と気づける仕組みを持つこと。

人は道場があるからブレないのではありません。

人は必ずブレる存在だから、道場を持ち続ける必要があるのです。

そして、

傲慢とは、

「自分にはもう学ぶ必要がない」

と思った瞬間から始まります。

 

自分のビジネスを客観的に見る場所として、
ソウルワークを活用していただければと思います。

ではでは!

 

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杉村崇 takashi sugimura

日本思想×ビジネスの翻訳家。ビジネスコンサルタント歴20年。株式会社ウェブロック代表。IT・音楽業界・店舗・中小企業・個人から上場企業まで経験。ブログ年間100万PV突破。金儲け主義に違和感のある起業家へ、“三方よし”の日本的起業家精神とスモールビジネスの学びを提供

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