どうも。スギムーです。
「ポルカドットスティングレイ」というバンドがいます。
彼らはTwitterにYoutubeにアップしたMVを載せれば、数百万回と再生されるネットを中心とした人気で、そうした活動の結果、結成してたった2年でメジャーデビューしたんですね。
インタビューを要約すると、彼らのデビューには社会人としてゲーム会社の現場に携わってきた経験が大きいと言っていて、「マーケティングをして楽曲も作っている」と言ってます。
「“自分の作りたいもの“を作るのではなく、“お客さんが欲しいもの“を提供し続けないと。だってこれは仕事なのだから。ユーザーが求めるものをリサーチしてから手を動かす。ローンチ後もユーザーの声を入念に調べて、次のバージョンアップに反映する。音楽も同じ方法で作っています」
これに対して批判的な声が見られるわけです。
成功したバンドの話を読んでいたら、自分の作りたいものではなく、お客さんが欲しいものを提供する、これは仕事なのだからという言葉があった。確かに売れるためには客のほしいものを作った方がいい。だが、仕事と割り切って作ったものに魂はあるのか? 私はそんな下らないものを音楽といいたくない。
— ウーハ店長 (@cafeuha) 2018年1月13日
さて他にもいろんな意見があるようですが、どうでしょう。
僕は音楽業界を中心にマーケティングの仕事をしてきた過去のある人間なんですが、音楽系の人がよくこんなことを言うんですよ。
「音楽は金儲けじゃない」
と。
で、議論の前に、そもそも「音楽」って何ですか?ってことですよ。
その音楽の定義も抽象的なまま、論拠も持っていないような人間が音楽ビジネスを批判して、しかしその中で生きていかなければならず悩み苦しんでいるから、「音楽は金儲けじゃない」と言ってるんですよ。
とりあえず僕にとっての音楽の定義は、というかアートの定義は「気づきを与えるもの」です。
人が気づいていないことを、表現として伝えるもの。
生きることは何かと気づきをくれる。
優しい気持ちがあることに気づきをくれる。
人の優しさを
愛とは何かを
自然があることを
戦う勇気を
あらゆる忘れてしまった、今、見えていないことを気づかせてくれる
新しいものの見方を与えてくれる。
それが「表現」だと定義しています。
隠れていて気づいていないことだから、表に現わせる必要があるわけで、それ以外に表現の定義があるとは思えません。
であれば、人に伝えることが目的ですよね。
で、「伝わる」には、どうしたらいいでしょうか?
・こちらの言いたいことを一方的に言えばいい?
・それとも、音楽を聴かせまくればいい?
・それとも、相手が欲しいという音楽を作ればいい?
どれも違います。
相手が誰なのか?
何に悩んでいるのか?
どういう生活をしているのか?
いつ音楽を聴きたいのか?
どんな時に聴くのか?
何も知らずに、一方的に言ったことは伝わりません。
なら、とにかく電波に乗せて聴かせまくれば伝わります?
じゃあ、リスナーが「こんなの聴きたい」っていうものを作れば刺さります?
相手は素人ですよ?
素人が欲しそうなものを想像して作ったところで刺さりませんよね?
「ニーズに合わせる」っていうのは、
相手が言ってることをしてあげるんじゃないんですよ。
「相手を知って、その上で自分が何をすべきかを考える」
ということです。
例えば、あなたの彼女がいて、「あれして欲しい、これ買って欲しい、ああじゃなきゃ嫌だ」と色々とニーズを言ってきたとします。
それをすべて叶えることがニーズを満たすこと、
ではないんです。
そんなの、自分が苦しいでしょ?
そうではなくて、なぜそう言っているのか?
という根っこにあるのがニーズです。
もしかしたら、単純に「寂しかった」とかかもしれません。
ニーズを満たすとは、下僕になることじゃなく、耳を傾けた上で、自分の役割を全うすることです。
だから、相手を満たせる。
だから、感動させられる。
だから、相手と対等になれるんです。
だから、彼らがやってることは、至極当たり前なんですよ。
リスナーがどういう人で、何に悩んでいて、どんな生活をしていて、どんなことを言っているのか?ということに耳を傾けて、
その上で、自分たちの強みやビジョンを重ねて、もの作りや活動の方針を決めていく、というのは。
ごくごく当たり前のこと。
でね、「金儲けじゃない」っていうのは、
「金儲け=悪」っていうのが前提にあるんですよ。
「客に合わせた音楽なんてそんなのただの商売」っていう意見は
「商売=悪」なわけですよ。
考えて見てください。
アーティストは、
伝えたいこと、気づいてもらいたいこと、心震わせて欲しいことがあるんですよ。
その活動には、「人」「もの」「金」が必要なんです。
より、感動を与えるには、
より、多くの人に伝えるには、
そうした資源が必要。
そうした資源があるから、より良い作品が作れるし、リスナーを感動させられる。
その前提の上で、さらに言えば、
金儲けをしようとしても、金儲けはできません。
詐欺でもない限り。
だって他人の金儲けのために、金を払う人なんていないですから。
課題を解決するために、感動したいために、相手はお金を払うんですよね?
だから、金儲けなんかしようとしなくても、
刺さる作品があれば、刺さる活動があれば、
勝手に儲かってしまうだけなんですよ。
考えても見てください。
第一線で活躍するアーティストは、独りよがりの作品や活動をして、誰も共感しないキテレツなメッセージを発信してますか?
違いますよね?
なんで刺さるんですか?
才能ですか?
好きなことをやってるから?
違いますよ。
人に寄り添えるからでしょ?
人の痛みを知ってるからでしょ?
人の悩みを知っているからでしょ?
みんながどこに行きたいのか考えているからでしょ?
気づいて欲しいことが、伝えたいことがあるからでしょ?
その上で、全く見たこともない世界を見せてくれる。
だから、1つの音で、言葉で、
人を魅了できるんですよ。
いい加減、自分の才能を、妄想によって閉じ込めるのをやめて欲しい。
あなたの才能は、人に寄り添えば発揮される。
あなたは誰を幸せにしたいのか?
どんな世界にしたいのか?
なんの問題を無くしたいのか?
それには、自分を知り、相手を知ることです。
つまり、人を知ること。
感動する相手は「人」なんだから。
その上で、自分がすべきことをすればいい。
ポルカドットスティングレイ、そのスタンスにとても共感します。
ボーカルの雫さんの返信↓
どうも申し訳ございません。今初めてあの記事の方だということに気づきました。私が記事を読んで受けた印象とまったく違うのですね。
あの記事では余りにも仕事の部分が強調されていて、音楽はどこへ行ったのと思ってしまいました。
しかし、雫さんが音楽に誠実な方だと知ることができて良かったです。— ウーハ店長 (@cafeuha) 2018年1月14日
↑早速聴いてる。