音楽業界が今後、生き残る方法。音楽は終わってなんかいない

こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi

音楽アーティスト活動講座を実施中です。↓

僕は一応、音楽業界系のビジネスコンサルという立ち位置だったという過去があります。
アーティストやレコード会社、インディーズレーベルなどのサポートなどを専門に6年くらい活動していました。
今では、中小個人の全業種の戦略コンサルからブランディングまでやっていますが。

そういう立場なので、今回は音楽業界の本当の問題と、今後の戦略について考えていきます。

まず、そもそも音楽業界は終わってなんかいません。
冷静になりましょう。

こんなに素晴らしいアーティストがたくさんいて、
これだけ様々な技術が進歩していて、
古いものから最新の音楽まであって、
なんで、「終わっている」といわれているのでしょうか?

今回は、「音楽業界は終わっている」的な風潮に対して、
正しい見方をしていきたいと思います。

■音楽業界のビジネスモデルは破綻しているのか?

「音楽業界は衰退している」と言われていますが、
実際に衰退したのは「音源の販売ビジネス」であって
音楽ビジネスそのものではありません。

音楽業界といっても、アーティストの収益モデルというのは
様々なものがありますから、
ライブを初め、タレント業、
音源以外の他の収益源が大幅に落ちているということはありません。

そもそも、

音楽業界=音源ビジネス

と捉えること自体がナンセンスです。

音楽を作っているのもパフォーマンスしてるのもアーティストなのですから
そのアーティストが生み出す価値というのは「音源」だけには止まらないのです。

ライブの体験価値
ファンや社会への影響力
メッセージの価値
タレント性
容姿、ファッション

アーティストは様々な価値を持っています。

それこそ、人間の人生を変えるくらいの価値を持っています。

そうしたありとあらゆる価値を見出して
時流に合わせて業態を変化させているアーティストや企業は
未だにビジネスは成長しています。

■なぜ音楽業界は衰退しているのか?

歴史的に考えれば
最初は録音の技術がなかったわけで、
生演奏しかなかったわけですよね?

それが録音技術によって生演奏だけ、という価値から
レコードという価値も加わり、
時流とともにカセットテープ、
そしてCDになり、
そのCDのレンタルになり、
ダウンロードになり、
定額配信になり、

と、どんどん複製の再現性が上がるとともに
利便性が上がり、「低価格化」
していきました。

データとして複製可能なものはどんどん
それ自体の生産コストが落ちていき
無料化に向かうものです。

もちろん楽曲の制作にはコストがかかりますが、
データという個体そのものには生産コストがかかっていないのです。
CDの原価も1枚200円くらいですし、
サーバに置いておけば、何十万人がダウンロードできますからね。

書籍や漫画などの複製可能なものも
同じように低価格化が進みました。

今読んでいただいているブログもですよね。
記事を書くという労力がかかっているものですが無料です。

しかし、ニンジンがいくら大量生産できたとしても
食べられる物質という性質に価値があるわけで、
データのように複製は不可能ですから、
無料化することはあり得ません。

データ化が可能な、
「文字」「写真・画像」「映像」「音声」というものは、
生産コストがないので、
低価格化・無料化に向かう
ことは最初から分かっていることです。

勘違いないように書き添えますが、
あくまで商品であるデータそのものの生産コストが複製だから
ほぼ無料という意味ですからね。

■音楽業界を成長させたビジネスモデルとは?

しかし、その無料化できる性質こそが
音楽業界を成長させた要因
でもあります。

音楽は最初、どこで聞くのか?
といえば、テレビやラジオ、街中でのBGMなどです。

それらはすべて無料ですよね?

そうしたメディアで、
無料で音楽を聞き、有料版のCDを買う、
さらに生で聞きたければライブに行く。

というのが、音楽業界の基本的なモデルでした。

音声や映像は、
電波に乗る性質、データ化できる性質があるから
無料で体験させることができた。

無料体験をし、良かったから買う、という流れができた。

これはつまり、形を変えたフリーミアムモデルです。
体験版を試して、有料版を買う。という。
最初は無料というモデルです。

インディーズの人とかはまずここに気付きましょう。
先に無料で聴かせる機会がないとファンは増えませんからね。

最初は無料で聞いてもらう機会を増やして、アーティストの認知を高めていくことが基本です。その活動を止めてしまえば、少しファンがついたところで収益化し小規模なライブを繰り返す身内ビジネスで終わってしまいます。

音楽業界はこの性質を生かし、
この音声データを多くの人に聞いてもらうチャネルを手に入れた
それがテレビなどのマスメディアですよね。

これが音楽業界の成長要因です。

■音楽業界の現状は暗くはない

しかし、強みである、「大勢の人に、一律に、無償で
提供可能な、音声データ(電波)」という強みは、
同時に弱みでもあったわけですね。

なぜなら、販売する商品そのものが、
音楽データ(CD)そのものだったわけなので、
それ自体が、容易に複製可能になれば
音源そのものを販売するという商品が成立しにくくなる
のは当然です。

大昔は、CDを複製する機械は一部の企業しか持っていなかったわけですが
今では、一般人が自由にPCやスマホ、ストリーミングサーバーを使って
音源データをいつでも複製、取り出し可能な時代になったわけですから。

実際に、音源ビジネス(音楽ソフト・配信)は
ピークである1998年に6000億を超えていましたが、2016年時点では半減の3000億円を切っています。

無料化・低価格化が音楽ソフトそのものの売上減少の要因であることは
疑いようがありません。

しかし、

ライブの売上高は、
1996年時点で719億円に対して、
2016年は3100億円と成長を続けています。

つまり、音楽ソフト・配信・ライブの売上高合計では、
音楽ビジネス全体の売上高は、ピーク時である1990年台後半と現在は
ほとんど変わっていない
ということになります。

これは体感ではなく、公表されているデータ上の話です。

■音楽業界が今後取るべきイノベーションとは?

もちろん、レコード産業には体感として、しんどい時代にはなっています。
しかし、それは先ほどお伝えしたように
複製可能なものは徐々に低価格化を免れません。

ですから、音楽業界にはイノベーションが必要なわけです。

音源販売ビジネスにとどまらず、
「アーティストに価値がある」ということを理解している優れた企業は
「音楽を売る」のではなく「アーティストを売る」ことをしています。

そのアーティストの価値を最大限に引き出しています。

それは、音源ビジネスという手法を捨てるという勇気ある行動です

・イノベーションとは捨てること

イノベーションで重要なのは

「自らを陳腐化させること」

とドラッカーは言っています。

つまり、「捨てること」です。

例えば、醤油なのに「液体をやめた醤油」があります。
250年以上続く老舗の醤油蔵が開発した「ソイソルト」という固形の粉末醤油です。
これは、フランス料理で醤油を使いたいが、醤油をかけると見た目が美しくないということで、形を変えて使いやすくしたことで、海外の高級料理店で利用されています。

醤油の基本要素である液体であることを捨てたのです。

音楽ビジネスも、音楽を売ることに主眼を置くことを捨てるべき時が来ています。

経営戦略とは「どんな市場にどんな業態で参入するか?」という意味です。
そしてそれは時代とともに変化をします。
音源を売るビジネスが衰退し、また新たな乗り物に乗り換えるという
市場の変化が訪れているに過ぎないのです。

そして、イノベーションは「他の業界に学ぶ」が基本です。

・ディズニーランドの収益源はチケット代金ではない

例えば、ディズニーランドは素晴らしいアトラクションによって
絶大な集客をしていますが、
チケット代金は、アトラクションの開発と運営費で消えてしまうはずです。

ディズニーランドの売り上げの半分は、飲食とお土産の販売です。
利益を出しているのは、メインに見えるチケット販売ではないのです。

音楽も、その一つのテーマに人が集まります。
そこで別のマネタイズをするというビジネスモデルに注目することができます。

映画館も、チケット販売ではなく、ポップコーンやドリンクで収益を上げるモデルです。

つまり、マネタイズのポイントは、
全員(Everybody)が頻繁(Everyday)に使う商品を扱うということです。

・カラオケボックスはカラオケを売っていない

例えば、カラオケボックスがありますが、
カラオケそのものに代金を支払っていませんよね?

ドリンク制度、そして飲食代を支払います。

つまり、カラオケという要素で集客をし、
飲食という必要性ある商品でマネタイズをするモデル
に変換している業態です。

例えば、ライブでの収益源の1つである物販
そしてそこに人が集まれば、他にも買いたいものが出て来ます。
ライブ主催者は、例えば飲食業も同時にやるべきなのですね。

つまり、音楽ビジネスは、音楽そのものを売ることだけから
様々な価値転換を図ることが可能なビジネスということです。

アミューズメントパークもカラオケも
いろいろなものを買ってもらって顧客単価を上げるという
「合計モデル」というビジネスモデルを活用しています。
100円ショップが良い例ですね。

・音楽から別のサービスへ

例えば、スポーツバーがありますが、
何かのスポーツチームのファンが集まる飲食店ですね。
これも音楽ファンからの転用ができるモデルです。

ホリエモン氏も言っていましたが
「地方のスナックは潰れない」というのは
そこにいる人に会いに来るからです。
コミュニティの形成ができれば、場所によるビジネスへつなげることができます。

実際に、歌手活動から音楽教室へ誘引するという
小さなビジネスモデルで、個人レベルで生計を立てているという人は
何人も知っています。

これも別サービスへの誘引という形です。
これらは、一般的な「物販モデル」と言われるビジネスモデルですね。

・アーティストというメディアを活かす

この話をしだすとキリがないので、ここで最後にしますが
アーティストの価値をマネタイズする方法として
「広告モデル」というビジネスモデルがありますよね。

例えば、有名アーティストならば、
その名前検索だけで月間で数百万回のgoogle検索があります。

これらのアクセスをコンテンツマーケティングで網羅し、
自社のウェブサイトに誘引し、
広告掲載で利益化すれば、何億円の「利益」になるのでしょうか?(笑)
こういうものも見逃されている気がします。
他のメディアはその名前の検索ワードで儲けているはずです。

SNSの投稿広告などもありますし、
Youtubeの広告収益もあります。

・内部相互補助で考える

こうした様々なモデルは、フリー戦略の中でいう
「内部相互補助」と言われるモデルです。

つまり、アーティストという価値、音楽という価値そのものを売るのではなく、
内部の見えない部分で収益化を図るという考え方です。

■音楽業界のまとめ

ここに書いたようなことはすでに音楽業界の人たちは取り組んでいます。
非常に優秀な業界ですから、アーティストの人は安心してください。

しっかりと、文化とニーズと数字という論拠を持って、大きなビジョンを描いている人間は確実に存在します。

インディーズアーティストや現場のマネージャーの方は、何か気づきがあれば是非参考にしていただき、ビジネスのLTVを最大化しましょう。

ポイントは

・無料で音楽を聴いていただき認知・集客へつなげるという性質を活かす
・音楽ではなくアーティストの価値を高める
・音楽だけではなく別のマネタイズを取り入れる

ということです。

「音楽業界は衰退している」ということはあり得ません。

これからが本当の成長の時です。

過去のビジネスにしがみつく既得権益の塊のような旧態依然の人間に耳を貸してはいけません。
「過去のやり方」「自分のやり方」を捨てられない人になってはいけません。

音楽は自由です。
音楽は、常に時代とともに変化するメッセージです。

もっと自由な存在です。

人間が作ったもので
音楽ほど素晴らしいものはそうそうないのです。

さぁ、新しい世界へとっとと行きましょ。