神よ、天にまします父よ、
私たちに変えられないものを受け入れる心の平穏を与えて下さい。
変えることのできるものを変える勇気を与えて下さい。
そして、変えることのできるものとできないものを見分ける賢さを与えて下さい。
われらの主、イエス・キリスト。
アーメン。
(ラインホルド・ニーバー)
これは、アメリカの神学者ラインホルド・ニーバー(1892–1971年)が伝えたとされる「祈り」の一説で「ニーバーの祈り(Serenity Prayer)」として米国では有名なもの。
人生の全てがここに凝縮されています。
人生とはまさにこの祈りのように、変えられないものに苦しまされるものであり、変えられることを変えずに、また苦しむという、そんな人間の苦しみがこの祈りとなって表れている気がします。
Contents
ニーバーの祈りは宇多田ヒカルも引用
宇多田ヒカルの「Wait & See ~リスク~」にも似た表現があります。
変えられないものを受け入れる力
そして受け入れられないものを 変える力をちょうだいよ
(宇多田ヒカル「Wait & See ~リスク~」)
↓懐かしの空飛ぶやつですね。該当の歌詞の箇所から再生します。
この祈りから我々は何を学べるのか?
ニーバーの祈りをもとに、人生の戦略を解説していきます。
■ニーバーの祈りの意味:3つの力
この祈りの中に出てくる「与えて欲しい」要素は3つです。
1、変えられないものを受け入れる心の平穏
2、変えることのできるものを変える勇気
3、変えることのできるものとできないものを見分ける賢さ
この3つの要素さえ手に入れれば、人は幸福に生きることができるはずです。
祈りの趣旨もそこにあるでしょう。
確かにそんな平穏な心と、勇気と、賢さがあれば、
心が豊かに暮らしていけますよね。
ではそれら3つの力とは一体なんなのでしょうか?
■全ての苦しみは変えられないものを変えようとするから起きる
と、その前に、
まず苦しみとはなんでしょうか?
悲しみとはなんでしょうか?
平穏ではない感情とはなんでしょうか?
それは、簡単で、「受け入れられない」という状態のものです。
大切な人が亡くなった
病気になった
会社が倒産した
上司に怒られた
彼女にフられた
失敗した
そうした出来事に対して「受け入れられない」
ということが、悲しみ、苦しみといった
負の感情をわき起こします。
しかし、起きてしまったものは変えようがありません。
人は生き返らないし、
時間は戻らないし、
言ってしまった言葉はもとに戻りません。
その「変えようがないもの」を変えようとすることが
苦しみの始まりです。
■ニーバーの祈り(1)変えられないものを受け入れる心の平穏
まずニーバーの祈りの最初に出てくるのが
「変えられないものを受け入れる心の平穏」です。
これが苦しみの原因な訳です。
では「変えられないもの」ってなんでしょう?
起きてしまったこと?
過去?
他人?
そうですね。それら全部でしょう。
つまり、変えられないものとは、
「自分以外の全ての事象」です。
本質的に、
自分が引き起こす事以外は、全て変えることはできません。
他人に影響を与えるという行動は自分の行動であって
相手がその影響によって、どうするかは相手次第です。
人が人を変えることはできませんし、
世界も、過去も、何もかも、変えることはできません。
それを変えようとするから、苦しみは起きます。
それを受け入れる力さえあれば、という祈りなのです。
■ニーバーの祈り(2)変えることのできるものを変える勇気
続いて欲しているのは、「変えることのできるものを変える勇気」です。
では変えることができるもの
というのは一体、なんでしょうか?
もうおわかりですよね?
「自分」です。
自分の考え、自分の行動
それしか変えられるものは存在しません。
人生で起きた全ての事象、体験は、
自分がそう考えたことによって、
そう受け取ったことによって体験したものです。
人は自分が捉えたように、物事や世界を見ています。
また、自分が行動したことによって事象は引き起こされます。
全ては、自分の思考の選択、行動の選択によって
引き起こされたり、体験しているものです。
そして、唯一変えることができるのも、
自分の捉え方やものの見方、行動だけなのです。
■ニーバーの祈り(3)変えることのできるものとできないものを見分ける賢さ
最後に欲しているのが
「変えることのできるものとできないものを見分ける賢さ」です。
では、
変えられないものと、
変えられるものを、どのように見分ければいいのでしょうか?
交流分析で著名な精神科医エリック・バーンはこのような言葉を残しています。
他人と過去は、変えられない。自分と未来は、変えられる。
(精神科医 エリック・バーン)
まさに、変えられるものと、変えられないものです。
また、全ての成功哲学の源流に当たる世界三大心理学者の一人、アルフレッド・アドラーの「アドラー心理学」では、「課題の分離」という考え方があります。
自分がすべき課題なのか?
それとも他人の課題なのか?
まずは「これは誰の課題なのか?」を考えましょう。そして課題の分離をしましょう。どこまでが自分の課題で、どこからが他者の課題なのか、冷静に線引きするのです。
そして他者の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない。これは具体的で、なおかつ対人関係の悩みを一変させる可能性を秘めた、アドラー心理学ならではの画期的な視点になります。
(嫌われる勇気)
その課題の最終的に責任を取る人は誰なのか?
ということを考えれば、誰の課題なのかは分かるとアドラーは言っています。
■アドラー:自分の影響の輪にフォーカスすること
アドラー心理学をベースにした人間学の基礎と言える7つの習慣では
「影響の輪」というものがあります。
自分が影響を与えられる範囲を
自分の影響の輪、と言います。
自分の考え方
自分の行動
自分の仕事
自分が発言すること
他人への接し方
過去に起きたことへのものの見方
未来の選択
そうしたことは自分の影響の範囲で変えることができます。
しかし、
他人の考え方
他人の行動
他人の仕事
他人の発言
他人から自分への接し方
他人が引き起こした事象
会社
社会の出来事
過去
と言った、自分の影響の輪ではない部分、
つまり他人の影響の輪は、変えることができません。
自分の影響の輪にフォーカスするしかないのです。
■ニーバーの祈りのまとめ
「ニーバーの祈り」をまとめると、
・変えられないもの=他人や過去
・変えられるもの=自分の思考や行動
・それを見分ける=最終責任は誰が取るのか?
ということが理解できたと思います。
では、人生を変えるのに、何が一番重要なポイントでしょうか?
当然その通り。
「自分の影響の輪に対しての自分の思考と行動」
これを変える「勇気」です。
いつまで、他人のせいにしますか?
いつまで、社会のせいに?
いつまで、親のせいにしますか?
いつまで、会社の悪口を言いますか?
いつまで、お客さんが分かってくれないと言いますか?
いつまで、過去に嘆きますか?
こうした変えられないことに、
自分の人生を費やすのはやめよう。
変えられるものはただひとつです。
自分の人生に責任を持ち、
自分の思考と行動の選択を自らし、
自分がしたことによって人生を変えることができる。
それが「主体性を持って生きること」です。
主体性こそ人として最初に身につけるべき習慣です。
他人と過去は、変えられない。
自分と未来は、変えられる。
さぁ、勇気を。