フリーミアムモデルとは?21の成功事例に学ぶ戦略。今後あらゆる業界が無料化する

こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi

今、あらゆる業界が無料化に進んでいます。インターネット上にはあらゆる無料サービスがあり、リアルの施設も初月利用無料であるとか、物品でさえ初回無料というものもあります。

無料にすることによって多くの見込み顧客を獲得しやすくし、顧客獲得のための広告コストを抑えるというメリットがあり、成功していくビジネスがたくさんあります。

なぜ無料にすることができるのでしょうか?

それが「フリーミアム」というビジネスモデルです。

今、世界はあらゆるものが無料になる「フリーミアム」と、利用客が継続支払いを行う「サブスクリプション」という2つのモデルを行う大手企業に支配されつつあります。

Webサービス、店舗、施設、飲食店、音楽業界、セミナー、アイドルまで、様々な事例を紹介しますので、自分のビジネスにフリーミアムモデルを導入できないか?という視点でフリーミアムモデルを考えて行きましょう。

■フリーミアムの意味と3つのビジネスモデルとは?

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フリーミアムとは、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデルである。
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ということで、フリーミアムモデルは、提供コストが低いゲームや音楽、動画といったデジタルコンテンツや、ソフトウェア、Webサービスなどで採用されるケースが多いわけですが、利用者が無料でサービスを受けられるという定義においては、デジタル産業だけではなく、あらゆる業界で採用可能なモデルです。

フリーミアムは一般事業者に関係があるところで、大きく3種類のビジネスモデルがあります。

(1)直接的内部相互補助

何かの商品サービスを無料で提供し、他の商品の購入を促進させるモデルです。
多くの無料お試しキャンペーンは、無料でそれを手に入れ、別のものを購入してもらうことで成り立っています。携帯電話は機械は無料で、通話料を支払うことで成り立っています。

(2)三者間市場

商品サービスを利用する顧客から直接代金を回収するのではなく、第三者がそのコストを負担するモデルです。無料で見られるテレビ、フリーペーパーなどは利用者は無料で、広告主がコストを負担するという広告モデル。第三者の代わりに集客を代行し、第三者の売り上げの一部をもらうといった集客代行モデルなどが当てはまります。

(3)フリーミアム

基本的な商品サービスを無料で提供し、そのサービスを継続する、あるいはそのサービスのプレミアム版、プロ版にアップグレードしてもらうというのがフリーミアムです。「フリー」と「プレミアム」の造語ですね。ソフトウェアなどで無料版を配布し、期間限定で使い、それを継続的に使うには有料となる場合などがフリーミアムです。

これらのいくつかのモデルは、単独で採用されることよりも複合的に組み合わされて使われることが多くなります。

これだけではイメージできないので、上記の種類に合わせて事例を紹介していきます。

■フリーミアムの事例

・プレミアム移行型フリーミアムの事例

Dropbox

ドロップボックスはクラウド上にデータを保存し、あらゆるデバイスから同じデータを取り扱えるというWebサービスです。僕も9年くらい前から使ってます。無料登録で基本的な機能は全て使うことができ、無料プランでは2GBの容量までデータの保存ができます。使っているとそれだけでは足りなくなってくる場合があるので、それ以上の容量を求める場合は有料となるわけです。有料版は1TBで月額1200円〜となります。

無料版と同じ軸の価値を、より大容量で提供する有料版への移行を一部のユーザーが行うことで成り立っているサービスですね。しかも、容量が足りなくなってくるので、アップグレードする「必要性」がありますし、データを「人質」に取られてるので、そうそう解約することもできない習慣化されたサービスというのが素晴らしいところです。

Hulu

Huluは、Netflixなどと同じく映画などが見れる動画配信サービスです。2週間無料で利用することができ、それ以降は月額933円で継続的に利用できます。無料版でサービスの全てを利用できて、そのサービスの継続利用をするために課金を行うというタイプです。これは、定期販売、定期購読などサブスクリプション(月額課金)モデルでよく利用されるマーケティング手法の一つですね。

Apple music

アップルミュージックは音楽が聴き放題というストリーミングサービスです。Spotifyが世界的には最大ですね。動画配信系と同じく、3ヶ月は無料で以降は有料になるというタイプのフリーミアムモデルです。無料だったらまず入ってみよう、使ってみよう、という気になりますね。このサービスも僕は使ってます。

食べログ

食べログは、飲食店の口コミが見られる情報サイトです。サイト自体は無料で見られますが、月額300円のプレミアムメンバーになると、さらに高機能なサイト内のサービスが受けられます。クーポンがもらえたり、詳細な検索ができたりといった内容です。170万人が有料サービスを利用(2017年時点)しているそうです。

こういった、同じ価値のさらに高機能なものが有料というパターンは、Webサービスに多く、ニコニコ動画やmixiなど、多くの無料サービスが導入しているモデルです。ただ、普段から無料で使えるものが、ちょっと高機能というだけで有料というのは、申込者を増やすのに難易度が高そうですね。

フィットネスジム

どうしてもフリーミアムの話だと、Webサービスの例が多くなってしまうのでリアルなものも入れておきますが、フィットネスジムで初月無料、以降は月額料金といったキャンペーンがありますが、これはHuluやApple Musicと同様の考え方です。そう考えると、リピートされるビジネスであれば、近いことができるということですね。

・直接的内部相互補助型フリーミアムの事例

携帯電話

Apple iPhone 8 64GB Red 4.7インチ 国内版SIMフリー 白ロム MRRY2J/A

基本的なサービスが無料で、別のものに支払ってもらうという直接的内部相互補助の代表格としては、携帯電話があります。先ほどのプレミアム移行型の一般的なフリーミアムモデルでは同じ価値を提供し、プロ版、あるいは継続利用ということに課金しましたが、直接的内部相互補助の場合は、携帯電話自体は無料で、通話料という別の事柄で課金をします。

クレジットカード

アメリカン・エキスプレス®・カード

これも同様で、クレジットカード自体は無料で作れますが、手数料を加盟店が支払い、そこから料金を徴収しています。銀行も無料で口座は作れるし、預けるのも無料ですが、引き出しや振込の手数料を支払いますね。

Base

Baseは無料でネットショップが作れるサービスです。どうやって運営しているかといえば、クレジットカードと同じ、販売手数料を徴収している形になります。ネットショップの作成自体は無料で、ショップが販売した額に応じて手数料を支払うということです。

無料カラオケボックス

オン・ステージ パーソナルカラオケ HDMI対応 PK-XA02W 796915

もう少しわかりやすい例を出しましょう。カラオケボックスの無料キャンペーンは、カラオケ自体の利用は無料ですが、ドリンクや食事で利益を出します。

キッズイートフリー・プログラム

【M'home style】白い食器 チョー使いやすいM’オリジナルランチプレート ホワイトレベル2

飲食店のフリーミアムです。これはあまりここに書きたくない事例ですが(笑)
簡単に言えば、「お子様は飲食無料」というプログラムです。アメリカの飲食店がファミリーを集客するのに流行っている方法です。子供は一人で来店しませんから、大人の飲食代金は有料で、子供だけが無料になる。これによって家族の集客が増えて、売上が上がるという話ですね。もちろん、フリーライダー(ただのり客)を集めてしまっても意味がないので、大人の飲食は義務付けるとか、特定のクレジットカード保有者限定とか、有料客層を集める工夫が必要です。

富士急ハイランド

世界遊園地大全 想像を超える、世界の楽しい遊園地

最近の面白い事例としては、遊園地の富士急ハイランドは入園料金を無料にしました。乗り物単位のチケットや飲食代金で利益を出すモデルに変更したということでしょう。無料にしたことで客数が増え、別の収益源が高くなるという見込みです。成功するかどうか見逃せませんね。

・三者間市場型フリーミアムの事例

フリーペーパー

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方

テレビやラジオ、フリーペーパーなどがなぜ無料なのかといえば、広告主がいるからですね。ほとんどの無料メディアはこの三者間市場モデルを採用しています。

ブログ

livedoor Blog - 多機能ブログ投稿アプリ

ブログもメディアですから、なぜ無料で見られるかといえば、ブログに広告が掲載されているか、別の収益源があるからです。他にもYoutubeなどの無料動画メディアや、無料オンラインゲームなども広告で成り立っている形になります。

Google

How Google Works(ハウ・グーグル・ワークス) 私たちの働き方とマネジメント (日経ビジネス人文庫)

検索エンジンも三者間市場によって成り立っています。Google検索は検索された際に表示されるアドワーズ広告や、その広告を他社のウェブサイトが自社メディアに掲載して広告費を稼ぐというモデルを提供しているため、あらゆるGoogleのサービスは無料で使えるのです。

Facebook

ソーシャル・ネットワーク (字幕版)

Facebookやインスタグラム、アメブロのようなソーシャルメディアも同じく三者間市場の広告モデルを採用しています。ユーザーは無料。広告主がそこに集まったユーザーに広告を見せることでFacebook側に料金を支払っているわけですね。

タダコピ

メディアの紹介ばかりでは面白くないので、変わったビジネスモデルを紹介します。大学に無料コピー機を提供している「タダコピ」です。なぜ無料かといえば、コピー用紙の裏側が広告になっているわけです。広告主から利益を得て、学生のコピー代金を無料にしてあげるという、問題解決をしている素敵なビジネスモデルですね。利用者にマッチする広告主を見つければ、サービス提供は無料で行えるというわけです。

・プロモーション型フリーミアムの事例

ここからは少しフリーミアムの概念を大きく捉えた「プロモーション型」といえるフリーを紹介します。主にエンタメ業界で、回り回って何かが売れるという不確実性の高いプロモーションですが、コンテンツが良ければ有効性は高い手法です。

無料音楽

Planet Earth

まずフリーのプロモーションとして最も有名なのが音楽です。基本的に音楽業界は、テレビ、ラジオなどの電波媒体で無料で音楽を放送し、認知度を上げることでレコード・CDを販売するという手法で伸びて来ました。今ではCDを買う風習が消滅しているので、そのやり方も通用しなくなって来ていますが、まだまだ面白い例はあります。

例えば、2007年にプリンスが新聞の付録としてCDを無料で配布しました。その数は280万部。新聞社側がプリンスに著作権料を支払う形で100万ドルを補填。新聞は通常より120%の売上になりました。しかしプリンス側は本来CDとして販売していればもっと多くの著作権料(560万ドルの収入見込み)を得られたのですが、そのマイナス分は、その後のコンサートのチケット全21回分が完売し、2340万ドルという記録的なコンサート収益をもたらしました。

他にも音楽の事例はたくさんありますが今回はこの辺で。
このようにして、プロモーションとして音楽を使い、別のものを購入していただくという内部相互補助的な考え方と、広告モデルとしての考え方を組み合わせてしますが、「あとあと」になってコンサートのチケットが売れるという、回り回って収益が増加するという不確実性があるので、直接的内部相互補助とは言いにくいところがあります。しかし、良いアイデアです。

グレイトフルデッド

The Very Best of Grateful Dead

グレイトフルデッドという60年代のロックバンドがいます。個人的にはこの時代のブルースロックは好きなので好きなバンドの一つで、ビートルズよりも稼いだバンドとも言われるわけですが、日本では全く知られていません。なぜならCDが大ヒットというよりも、ライブで稼いでいたバンドだからですね。彼らはファンにコンサートでの音源の録音を自由に許可をしていました。録音されたものがファンからファンへと広がり、どんどん加速的にファンが増えて、コンサートはお祭り騒ぎだったそうです。つまり、元祖「シェア」の達人です。音楽共有をこの時代に推進していたということです。

ただ、グレイトフルデッドの手法は、もはやYoutubeができた現代では当たり前のものになっていますから録音を許可しただけでは意味はありません。グレイトフルデッドのマーケティングをよく知りたい方は、以下の本を読んでください。おすすめです。

キングコング西野

えんとつ町のプペル

今や芸人さんとしてだけではなく、絵本作家として、起業家としてネットの有名人ですが、西野さんはフリーミアムの展開をよく研究されていると思います。これだけで記事が一つ書けそうなので、簡単にな事例を紹介します。

絵本として発売された西野さんの「えんとつ町のプペル」をネット上で無料公開し、話題を集めました。それによって、絵本そのものの売り上げが伸びたわけですね。これも不確実性のあるフリーのプロモーションと言えますが、購買設計がうまいので失敗する気は無かったでしょう。他にも著作権をフリーにしてフリーミアムの可能性を追求されてるクリエイターですね。出版や音楽業界は見習った方がいい(笑)

無料素材アイドル

「フリー素材アイドルMIKA☆RIKA」という、アイドルの方のプロモーションとして、アイドルの写真を広告やWebサイトなどで使う写真フリー素材として提供するというプロジェクトです。ユニークなプロモーションです。これで知名度をあげて、仕事の依頼がくるという流れなんでしょう。ミュージシャンに音素材を無料で提供すればいいのにとずっと言ってましたが、アイドルの方が先にやってくれました。

「著作権を守る」という流れがありますが、それがマネタイズの妨げになっているということに気が付いた人は、コンテンツをフリーにしてプロモーションに役立てているということがわかります。

TED

TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則

セミナービジネスも同様です。世界中の有識者がプレゼンテーションを行うTED talksは2006年の時は4400ドルと高額なチケットでした。しかし、その動画を無料でインターネットで公開すると、2008年には6000ドルとなり、今でも価格は上がり続けています。これは、無料公開によって需要が高まり、値段が高騰していったということです。

■フリーミアムモデルの問題点

・無料にしただけでは利益が出ない

こういう流れを見て、なんでもフリーにしようとするとだいたい失敗します。実際に、キングコング西野さんのプロモーションを見て、出版業界は無料化などをやってたりしましたが、収益化の仕組みがなかったので撃沈していました。無料にすることが目的になっていては意味がありません。あくまでフリーの利点は、見込み客の獲得が容易になるという認知・露出の優位性や、購入ハードルを下げることにしかありませんからね。ビジネスモデルは用意しとかないと意味がないです。

・無料でも欲しくないものでは見込み客は集まらない

ビジネスモデルがあったとしても、成功しないフリーというのがたくさんあります。それはそもそも無料でも要らないものなんです。試供品やデジタルカタログ、サンプル、資料、PDF、セールスのための動画といったもともと無料のものに人は価値を感じません。資料を配布すれば、それがフリーミアムだと勘違いしてしまう場合があります。事例を見ればわかるように、価値あるものが最初に無料で手に入ることで見込み客の注目を集めるのがフリーです。

例えばゼリーは最初食べ方がわからずに全く売れない商品だったそうですが、レシピと一緒にゼリーを無料で渡すことで使い方がわかり大ヒット商品になりました。この場合のレシピには価値があることは分かりますよね?

・黒字化までの時間とコストがかかる

最初は無料なわけですから、収益化するにはタイムラグがあります。そのコストを補填できないといけません。黒字化までの時間とフリーのコストを吸収することができないとフリーミアムは導入できません。Webサービスのような長期的な開発はコストが莫大かつ、収益化も長期にわたるのでその計算ができているかがプロジェクトの成功のカギになります。業種によっては、収益化までのコストは大した問題にはなりませんが、コスト計算は重要です。

■今後あらゆる業界がフリーミアムになる

価値あるものをビジネスモデルを用意した上で無料化するというフリーミアムモデルは、今後、あらゆる業界で適用され、フリーを導入しているサービスが世界を圧巻していくことになるはずです。

例えば、先日見たニュースではコインランドリーの無料化を考えている企業のインタビューがありました。

これは三者間市場の広告モデルをコインランドリーに導入する計画です。顧客目線で考えていけば、最終的にデジタル分野だけではなく、施設も無料化するのは必然的です。

あるいは同じコインランドリーなら、コンビニがコインランドリーを併設するプロジェクトをスタートしています。

これもコンビニの集客にコインランドリーが貢献するならば無料化も時間の問題です。こちらのモデルはコンビニで収益化するという内部相互補助の考え方になりますね。

情報を有料セミナーなどで公開することを目的にしている専門家は、ブログなどで無料でノウハウを公開しまくる専門家にマーケットを取られていきます。

施設の貸し出しや、飲食店、サービス業などはフリーミアムのお試し利用を導入し、見込み客を容易に獲得する事業者が地域の市場を持って行くことでしょう。

野菜セットが初回お試しで無料という通販もあります。

このようにあらゆる業界が無料化に向かって行くわけです。

■フリーミアムのまとめ

フリーミアムは、収益化が可能なビジネスモデルと、商品サービスの価値、そして勇気(笑)があってこそ成り立つマーケティングモデルです。

少し高度ですが、自分の業種で導入できそうと思った人は是非、検討してみてください。

結構、面白いことになると思いますよ。