戦略・ビジネスモデル

事業ドメインの意味とは?事例で設定方法を分かりやすく解説

こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi

どんな業態・製品で、どんな市場に参入するのか?ということが「戦略」というものですが、ある程度の成長をすると複数のビジネスを持つようになります。複数のビジネスがないと成長は止まるからですね。

しかし、複数の事業や商品を多角的に展開する際、どの範囲までのビジネスを行うのかを決めていないと、いろいろなビジネスを展開したり、いろいろな商品を取り扱い、まとまりがなくなるだけでなく、投資する資源も分散してしまい、拡大が悪影響になります。

そこで、企業は自社の「事業領域」というものを決めます。つまり、「誰に対してどういうことを行うのか?」「どんなビジネスならしていいのか?」という基準を持っているわけです。
これを「事業ドメイン」と言います。

中小企業や個人事業主にはあまり関係がないと思われがちですが、事業ドメインを把握することで、根本的な戦略ミスを回避することができるという、かなり重要な話なのです。

自分が「何屋」なのかという定義を決定づけるのが事業ドメインといってもいいでしょう。
これを勘違いしていると、間違いなく・・・。


■事業ドメインの意味とは?

事業ドメインとは、自社が「事業活動を行う領域」のことで、自社が「何屋」なのかを定義するということです。

なぜ事業ドメインの設定が必要かといえば、経営を圧迫させる多角経営を防ぎ、方向性を統一することで、少ない経営資源を分散させることなく、効果的に集中させることにあります。自社が本質的に「何屋」で、どの顧客に対してどの範囲の事業を行うのかが不明であれば、正しくビジネスや商品の選択ができません。

例えば、自社が美容院であるのにもかかわらず、不動産投資、レストラン経営などの多角経営を行うことで本業の利益を食いつぶし、経営が失敗に終わる、ということはよくあります。

他にも、「自分は〇〇屋だ」と決めつけすぎ、他の商品の展開、新規事業の展開ができず、身動きが取れずに、常識化された古くなった製品サービスを取り扱い続け、寡占化の波に飲み込まれてしまう、ということも少なくないのです。

そんな自体を招かないために、事業ドメインというのは設定されます。

■事業ドメインの例

・事業ドメインの失敗例:コダック

例えば、カメラのフィルムで世界最大規模の会社の一つであった米コダックは、写真のデジタル化を前にして経営状況が悪化し、フィルム産業自体が消滅したことで主力商品を失いました。結果として別の事業に転換するために企業買収を繰り返すも、2012年には倒産しています。

これは主力商品にこだわりすぎた結果とも言われ、つまり自社の定義が「フィルム産業のリーディングカンパニー」というイメージだったのでしょう。簡単にいえば「フィルム屋」と考えていたことで、デジタル化の対応が遅れたわけです。

・事業ドメインの成功例:セブンイレブン

現在、国内最大の小売業となっているセブンイレブンの事業ドメインは「近くて便利」です。

果たしてコンビニは何屋さんなのでしょうか?食品もある、お弁当もある、生活用品も、本もある。銀行やコピー機に支払い窓口、宅急便まである。果たしてこれを「何屋」とくくれるでしょうか?

「近くて便利な存在」としかいえませんよね?コンビニは「コンビニエンス」という「生活の便利」を売っているわけです。モノではなく、利用者のライフスタイルに注目して「業態」というのは作られるわけです。

■事業ドメインの定義が顧客・商品・競合を決める

「私たちは八百屋である」という事業の定義であれば、取り扱う商品は野菜しかありません。これが商品くくりでビジネスをする「業種ビジネス」です。

しかし、顧客は野菜ではなく、夕飯の材料を買いいくるわけですから、野菜だけ置いてあるお店は使いづらい。そこに対して「私たちは夕飯の支度や生活必需品の利便性を向上させるビジネスである」という定義であれば、業態はスーパーマーケットになり、扱う商品は野菜だけではなくなり、商圏も拡大します。

例えば、ディズニーのテーマパークの競合は関東にある他のテーマパークでしょうか?「花やしき」に行くか、ディズニーランドに行くか迷うことがあるでしょうか?なかなかないと思います。キャラクターグッズを買うのに、ミッ○ーか、ドラえもんかで迷うこともありません。

ディズニーの事業ドメインはテーマパークでもなければ、キャラクターグッズ販売でもなければ、飲食業やホテル業でも、映画プロダクションでもないはずです。「夢の国」というコンセプトで作られたエンターテインメントを楽しみに行きます。ディズニーの事業領域は夢の国を提供するためのエンターテイメントに関わるあらゆる付随事業が領域です。

伸びている企業の事業ドメインは、このように製品でくくるのではなく、顧客が求める「コト」に対して、決められています。

■事業ドメインの設定方法

では、どのようにして事業ドメインを決めていけばいいのでしょうか?

・事業ドメインの設定は事業の再定義

まず前提として自分のビジネスを「再定義」することが事業ドメインの再設定になります。

「私はライターである」という定義であれば、「ライティングならお任せください」というサービスになるでしょうが、「インターネット販売をする企業の魅力を引き出し、最小リスクで最大の結果を出すビジネスである」という定義に変われば、例えば「成果報酬型インターネット販売代行サービス」というサービスに変わるかもしれませんよね。

前者は自分側の目線から「文章を書く技術」を売り物にしていましたが、後者は顧客側の目線から「ネット販売を立ち上げる」という『コト』に注目されたビジネスに切り替わりました。

このように、ビジネスの定義そのものを見直すことで、自社が誰の何のために存在し、どんな社会にして行きたいのか?どんな人を増やして行きたいのか?ということがはっきりしてくるのです。

・CFT分析で「モノ」ではなく「コト」に注目する

それには「モノ」や「サービス」を販売する、という考え方から、「顧客が求めているコト」を考慮しなければいけません。

以下の3つの軸を整理することで事業ドメインを策定して行きます。

顧客軸(Customer)→誰に対して(対象者のニーズ)
機能軸(Function)→顧客が必要としている機能(価値)
技術軸(Technology)→どんな技術で実現するのか(経営資源)

対象者は誰で、どんな機能を求めていて、それをどんな技術・資源によって実現するのか?です。
機能とは商品そのものではなく、顧客が求める結果です。

八百屋の例で言えば、顧客が求める機能は「夕飯の支度」なわけです。それに対して野菜という商品だけを提供していたのでは成り立ちません。逆に野菜だけの販売でも、買い物に行く回数を減らしたい客層に向けて「定期的に届けてくれる」というデリバリーの機能を提供すれば、求められるコトは生活必需品の中でも「運ぶのが重たいもの」になってくるかもしれません。

カメラフィルムでいえば、顧客は思い出を効果的に残したいのです。フィルムが欲しかったわけではないのです。効果的に低コストで高画質で記録ができるデジカメに需要が移行し、それがスマートフォンに今や移行しています。

この世に商品が欲しい人はいません。商品がもたらす機能によって『結果』が欲しいだけです。その「コト」を理解せずに、商品サービスだけを販売していれば、売れなくなるのは当然なのです。

■事業ドメインのまとめ

「何を売るかではなく、どんな困りごとを解決するか?」

最も重要なのは、どんな求められている機能(コト)に注目するかです。

例えば「当店は美容室だ。髪を切ったりセットするのが仕事だ」となればそれ以上のサービスはうまれません。しかし、自社の客層が美に意識が高い層で、自社に美の研究技術があるならば、事業ドメインを「美容室業」から「総合美容施設」としてネイル&スパのような業態になるはずです。

あるいは自社の客層が、白髪染めのニーズが高く、アンチエイジングの資源があるならば、事業ドメインを「美容室業」から「若返り」と設定するかもしれませんね。

そして顧客のTPOSを考えることで業態は決まって行きます。TPOSはTime(時間)、Place(場所)、Occasion(場面)、Style(ライフスタイル)です。 どんな時に、どんな場所で、何をしたくて、どんなライフスタイルの人なのか?それによって、商品サービス、買いやすい提供方法、提供時間、宣伝方法、場所、価格が決まって行きます。

自社を「〇〇屋さん」と定義している場合、よーく、顧客が求めている機能が何なのかを考え直しましょう。

 

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