こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi)
ビジネスの世界では「コンセプト」という言葉をよく聞きますよね?
しかし「コンセプト」とは一体なんなのでしょうか?
・どういうテーマのお店なのか?
・どんなイメージの商品なのか?
・ビジネスを簡単に表したキャッチフレーズ
と言った曖昧な意味でコンセプトという言葉が
使われることが多いと思います。
しかし、これらは全く違います。
例えば、
「ロンドンをイメージしたスタイリッシュなカフェというコンセプト」
と言った感じで「コンセプト」が使われますが、
一体、そのコンセプトと言っているものは、誰の問題を解決しているのでしょうか?
どんな価値が得られるのでしょうか?
はっきり言って、全然わかりません(笑)
成功企業の表面だけをなぞると、このように顧客不在のコンセプトらしきものをあたかも「斬新な切り口」だと思い込んでビジネスを構築してしまいます。
それでは顧客から支持されなくても当然なのです。
今回は正しいコンセプトの意味、そしてその実例、実際の作り方を紹介します。
Contents
■コンセプトの意味とは?
コンセプトという言葉を辞書で引くとこうあります。
ーー
概念
全体を貫く基本的な観点・考え方
ーー
これだけです(笑)
これだけじゃわかりませんね。
「concept」の語源はラテン語の「concipere」。
調べると「しっかりと」「捕らえる」という意味だと分かります。
つまり、抽象的であるビジネスの全体像を
「しっかりと捕らえることができる」
というのが、コンセプトの役割ということです。
パッと聞いてわかる。
一瞬にしてどんなものか理解できる。
すぐにイメージができる。
ということ。
言ってみれば、誰しもの頭の中に映像が浮かぶくらい端的に表現されたもの
ということですよ。
■コンセプトはキャッチフレーズではなく価値の言語化
つまり、コンセプトとは、
イメージでもテーマでも雰囲気でも切り口でもありません。
「言語」なんです。
そのビジネスの価値を一瞬で伝える言語のことです。
そのフレーズを聞いて、
誰のためのものなのか?
何をするものなのか?
どういう価値があるのか?
と言ったことが「一言」でイメージできる言語。
それがコンセプトです。
では、具体的に、どう言ったものがコンセプトなのか?
実例を見ていきましょう。
少し僕の方で勝手に解釈させてもらったものもありますので
正式な表現ではないものもあります。
■コンセプトの実例
商品コンセプトの例
・iPod
1000曲を ポケットに
多くの音楽がポケットに入る小さな機械で持ち運べますよ、という価値を一言で表した、非常に秀逸なコンセプト。
・ダイソン
吸引力の落ちないただ一つの掃除機
掃除機の最も求められる機能である吸引力を追求した高機能商品であることを一言で表している。
・モーニングショット
朝専用 缶コーヒー
「朝」に活用するというオケージョン(場合)に特化したコーヒーということを表現。「専用化」という商品戦略のケース。
・ヘルシオグリエ
作りたてのおいしさ&余分な油を落としてヘルシーに焼けるウォーターオーブン
ヘルシーさに注目したオーブン。それを実現するために過熱水蒸気という技術を開発。技術ではなく目的のための技術であることに注目。
・やきまる
スモークレス焼肉グリル
「焼肉をやると煙が出る」という問題を解決している焼肉専用グリルというのを一言で表現。
・走れるパンプス
「パンプスは動きにくい」という問題を解消した動きやすいパンプスという表現で大ヒット。
・ウイダーinゼリー
10秒チャージ2時間キープ
「朝顔飯を食べない人が多い」という問題を解消した、手軽に摂取できる朝食というコンセプト。ゼリーの使用目的を変えたことでパッケージデザインも合わせて変更されていることに注目。
・切腹最中
謝罪の際の手土産に ユーモアのある和菓子
「切腹最中」というネーミングが、取引先に謝罪に行く時の手土産として言ったりだったためにヒット。こちらは開発秘話を聞くと「たまたま」出来上がったコンセプトのようです。
・うんこ漢字ドリル
日本一楽しい漢字ドリル
子供にとってドリルによる予習復習は楽しくないもの、という問題を解決しているコンセプト。
・強制プロポーズセット
結婚を煮え切らない彼に 強制的に婚約
煮え切らない彼からプロポーズされない、という問題を解消したユニークなコンセプト。ジュエリーの企業としては、フロントエンドとして活躍する商品コンセプト。
>>楽天市場
サービスコンセプトの例
・フェデックス
宅急便を 翌日配送で
物流の世界最大手企業。配送はスピードが問題、というのを企業努力で解決している。正攻法のコンセプト。
・サウスウェスト航空
空の旅を 世界一安く
こちらも至極正攻法なコンセプト。価格の問題を解消している。
・ジョブセンス
求人広告を 成功報酬で
企業は求人広告を出したくても費用が高い。そこで採用が決まったら支払ってもらう成果報酬型に変更。という問題を解消したコンセプト。無償掲載なら掲載企業も増えやすい。
・ライフイズテック
中学生、高校生のためのプログラミング・ITキャンプ/スクール
子供にとって勉強は楽しくないが、サマーキャンプという楽しさと、ゲームやグラフィックなどの技術習得なら楽しそうと思えるコンセプト。子供の問題を解消し親も行かせたくなるスクールです。
・リアル脱出ゲーム
脱出ゲームのリアル版 体感型イベント
緊迫感を味わえる「脱出ゲーム」というゲームコンセプトそのものをリアルに持ってきたコンセプト。エンタメのコンセプトはとにかく「面白そう」でなければいけない。
・OKweb
わからないことを ネット初心者でも聞けるQ&Aサイト
「ググれ」と言われてしまう初心者のための質問サイト。ネット初心者の悩みを解決している。
・乗り換えマップ
電車の乗り換えを マップで便利に
開発者はお子さんを抱えたママ。地下鉄の乗り換えが大変で自分で開発したところからスタートしている。まさに「ユーザー起業」。ユーザーの立場で不満だったことを解消。
お店のコンセプトの例
・スターバックス
家庭でもなく職場でもない第3の空間
店舗コンセプトとして美しい「サードプレイス」というコンセプト。憩いの場を提供している。実際にスタバで仕事をする人は多い。
・ドミノピザ
30分以内に熱々ピザを 自宅までお届け
USPの事例で最も使われる事例がドミノピザ。当時の利用者の「冷めたピザは嫌だ」という問題からこの約束をしたところブレイク。
・アスクル
事務用品が 明日届く
フェデックスの事務用品版。業種を変えただけでコンセプトは転用できるという好例。
・カーブス
女性だけの30分健康体操教室
女性専用かつ手軽というコンセプトのフィットネスクラブ。シンプルだがサイレントマジョリティを代弁したコンセプトと言える。「あるようで中々ない」というコンセプト。
・QBハウス
10分の身だしなみ
サービス業で速さを売りにすれば、組織化、マニュアル化というのが最も重要になるであろうが、そこを見事にクリアし、ユーザーが求めるニーズを満たす内容を一言で表現したコンセプト。
・俺のフレンチ
高級食材を使った高級料理を 低価格で
こちらもシンプル。「良いものを安く食べたい。」というのは誰もが思うところ。それを実現させる回転率と現場の技術があってこそできるコンセプト。そうそう真似できない参入障壁の高さ。
・デラセラ
誕生日専門のレストラン
これはかなり秀逸なコンセプト。ユーザーの誕生日というオケージョンに特化しているコンセプト。あまり紹介したくないほど優れています(笑)詳しくはここでは言いません。
・旬熟成 GINZA GRILL
耳と口だけで感じる体験型レストラン
目隠しレストラン、面白いですね。普通のレストランも暗闇にしただけでエンターテイメントに生まれ変わります。ここ大事ですよ?
・山形 時の宿すみれ
宿を お二人様専用で
こちらもオケージョン(場合)に特化。子育て世代、家族連れではなく、「お二人様」というオケージョンは必ずある。そこに専門特化しているコンセプト。
・高知県 馬路村農協
高知の柚子を 田舎丸ごとお届け
こちらは「田舎を感じたい」というニーズが見込める切り口ですね。爆発的なコンセプトではないが、清々しい、思いを感じる素敵なコンセプトです。結構、好き。
ブランドコンセプトの例
・シャネル
男性のためだった女性の服を
エレガンスと働くことを両立した女性による女性のための服へ
(女による女のためのモード)
当時は女性が自立ができなかった、ということへの大きな挑戦をシャネルはしました。これを語り出すと長くなるのでやめておきますが、ブランドコンセプトとはまさにこのことです。社会の問題は何か?物言わぬ大衆、サイレントマジョリティの代弁者にならなくてはいけないのです。
・ディズニーランド
魔法の 国
説明するまでもありません。日常から非日常へ、というこのコンセプトを元にディズニーの全てが作られています。
・ロクシタン
肌に安全なプロヴァンスの自然原料のシアバター
この業界の問題点をシンプルに探求しているブランドコンセプトです。自然あものを使いたいというのがユーザーのインサイトなのですから。他にも、ラッシュや、ボタニストも同様の方向性で大ヒットしています。王道ですからコンセプトだけでどうにかなっているわけではありませんが、その姿勢は見習うべきポイントがあります。
・ザ・ボディショップ
動物実験を行わない環境に優しい 天然化粧品
大変共感できる、哲学を感じるブランドコンセプトです。ブランドコンセプトは、物言わぬ大衆の代弁をし、顧客を新たな世界へ連れて行くメッセージなのです。
■コンセプトは「問題+解決策」の言語化
さて、ここまでくると全ての「コンセプト」は「問題+解決策」という言語で構成されていることが分かります。
そうです。ビジネスの価値は問題解決をすることなのですから、
「そのビジネスが何をどう解決しているのか?ということが、しっかりと捕らえられる言葉」というのが『コンセプト』なわけです。
イメージやフィロソフィー、ブランドプロミスではありません。
その企業の存在意義(ミッション)から社会貢献(ビジョン)までを貫いている価値、それを表したものこそが真のコンセプトです。
なので、残念ながら、戦略もターゲットも不明と言った
何も考えられていないビジネスでは
いきなりコンセプトをゼロから生み出すことは不可能です。
コンセプトは生み出したり、考えたりするものではありません。
そのビジネスがしっかりと価値があるものならば、
自然と多少ブサイクでも、すぐに言語化はできます。
コンセプトが思い浮かばない場合は
おそらく、戦略やポジショニングと言った基本的な計画がないからです。
■コンセプトの作り方
では、どのようにコンセプトを作ればいいのか?
ですが、まず、以下の5つのポイントを書き出していきます。
1、Target 誰のためのものか?
2、Method どんな方法なのか?
3、Benefit どんな結果が得られるのか?
4、New どう新しいのか?
5、Why なぜあなたが行うのか?
例えば、「iPod」というコンセプトで考えると
1、Target 誰のためのものか?
→音楽を持ち運びたい人
2、Method どんな方法なのか?
→デジタルデータとHDDによる音楽プレイヤーの小型化
3、Benefit どんな結果が得られるのか?
→1000曲もの音楽データを気軽に持ち運べる
4、New どう新しいのか?
→ダウンロード購入とCDからの取り込みでCD不要に
5、Why なぜあなたが行うのか?
→Mac OSとの連携ができるアップルだから
これを凝縮し、
「ユーザーにとって何が問題なのか?」
「ユーザーにとってどうメリットのある解決がされるのか?」
という2点を絞り込むと
問題=多くの音楽を持ち歩けない
解決=小さい機器で持ち運べる
ということが分かり
これを伝わりやすく、映像が浮かぶ言葉にすると
多くの曲=1000曲を
持ち運べる=ポケットに
という言語表現が生まれます。
「多くの曲」という曖昧なものが
「1000曲」とすることでイメージが湧きやすくなります。
当時のイメージで何百枚ものCDが入ったラックを思い浮かべたはずです。
そこにきて「持ち運べる」というのを具体的にいうと
「ポケットに入れて持ち運べる」わけなので、
何百枚ものCDがポケットに???
という、誰もが振り返る驚くようなコンセプトコピーが生まれるわけです。
■コンセプトのまとめ
コンセプトを作るにはまずはポジショニングからです。
その、ポジショニングを言語化したものがコンセプトと言えます。
どの分野に、どの業態で参入するのか?
誰が対象者なのか?
その対象者のどういう問題を解決するのか?
そして、どんな結果をもたらすのか?
結果をもたらすだけでなく、どう良いのか?
どう新しいのか?どう競合より優れているのか?
なぜそれを行えるのか?なぜ行おうとしたのか?
ということを掘り下げることで
コンセプトは生まれていきます。
ぜひ、参考にしてください。