こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi)
ビジネスを始めるということは、まず売り物である、価値が必要です。
いかに価値(イノベーション)が重要か?
ということは読者の皆さんはどんどんマインドセットされていると思います。
マーケティングのテクニックだけでビジネスはどうにかなるものではなく、価値があれば自然に売れていきます。魅力が作れていない状態でビジネスを広めるほど悪評が広まる一方です。
つまり、「広める力」よりも圧倒的に「売れる商品力」の方が重要ということです。
というわけで、今回は「商品作り」の基本をお伝えしていきます。
Contents
■商品企画と商品開発の意味とは?
(1)商品企画と商品開発の違い
「全てのものは二度作られる」
出典:7つの習慣
商品企画がなぜ必要か?というと全てのものは二度作られるからです。
最初は、頭の中で作られ、次に実際の形として作られます。
つまり、「こんな感じの商品を作ろう(仕入れよう)」という企画である
「知的創造(第一の創造)」
そして、実際に作る・用意するという商品開発・仕入れという
「物的創造(第二の創造)」の
2段階で物事は作られます。
ビジネスも人生も、全ての物事は最初の「知的創造」にかかっているのですね。
商品企画とは商品サービスというイノベーションの知的創造の範疇の作業なわけです。
(2)全ての業種に商品企画は必要
例えば、コンサルタントであろうと、セミナー講師であろうと、カウンセラーであろうと、ミュージシャンであろうと、店舗だろうと、個人事業主であろうと、全ての業種業態に商品企画という作業は必要です。
商品をステップに沿って企画しなければ、
- 「商品サービスが売れない」
- 「適正価格で売れない」
という状態になり、ビジネスを軌道に乗せることが難しくなります。
よくあるのが、
「デザイナーだからデザイン作業全般します」
「カウンセラーです。なんでもご相談ください」
といった「なんでもできます」「なんでも売ってます」というものです。
これでは、商品サービスを買った後に
「誰のどんな問題が」「どのようになるのか?」が不明ですよね?
これが商品サービスが売れない原因です。
「誰のどんな問題が」「どのように解決するのか?」
そのためにどう言った商品を開発すべきか?
それを明確にするのが商品企画です。
■商品企画の4つの切り口と例
では実際にどのように商品サービスを企画していくのか?ですが、商品企画の切り口には以下の4種類のアプローチが有効です。
商品企画の切り口(1)同じ顧客に別の商品
まず第一に、すでにビジネスをしている状態であれば、「既存の顧客に別の商品」を考えることが有効です。現在の顧客が、自分のビジネスに最も魅力を感じている点は何か?何を求めているか?ということに合わせて、商品を企画していきます。それには、既存顧客のリサーチを行います。
「優良顧客(購買金額の高い顧客・購買頻度が高い顧客)の共通点」
「最も売れている商品」
「購買動機(なぜ選ばれているのか?)」
によって、「どんな顧客がどんなことに困ってどんな商品を買い、どんな顧客層が最も自社に貢献しているのか?」を発見します。
例えば、カウンセラーが優良顧客を調査した際、最も貢献している顧客層は「恋愛の悩み」だったということがわかり、そこに特化したサービス、マーケティングに変更したことで業績アップをしました。
他にも、美容室が優良顧客の調査をした際、たった5%の顧客層が、最もリピートしている顧客層で、同じサービスを購入していたことがわかり、そこに特化したコンセプトに変更し、集客方法も変えたことで、リピート率が2倍以上、顧客単価が3倍にも上がるなど、業績アップのための商品サービス企画の手段としては最も有効な手段です。
リサーチ方法は以下の記事も参考にしてください。
商品企画の切り口(2)顧客が次に必要になるもの
次に確実なのが、既存顧客があなたの商品サービスを購入した後、困っていることをリサーチし、その問題を解決する商品を企画することです。顧客は、最初の商品で、当初の問題は解決しています。しかし、その問題が解決した後に「新たな問題や欲求」が生じているはずです。
言ってみれば、物語の第1章が終えた後、その続編をはじめるということです。
例えば、プリンターを買った後にインクを買う必要が出ますし、カミソリを買った後に、カミソリの刃が必要になります。これらは消耗品モデルと言われるビジネスモデルです。
場合によっては、また同じ商品サービスを販売するということかもしれません。例えば、語学教育の講座を販売している講師が、すでに講座を修了している顧客層に対して、「もう一度受講するメリット」を伝えることで、再受講というオーダーを取る、ということがありえます。
商品企画の切り口(3)同じ技術を別のマーケットに発想転換
次に、新規事業としての商品の切り口です。今持っている技術やリソースを、別のマーケットに販売できないか?という新たな発想転換で商品を企画する方法です。
例えば、iPhoneはPCを小さくし、携帯電話のマーケットに参入したものです。タッチパネルなどの技術は真新しいものではありませんでしたし、小型PCもPDAなど、以前から近いものはありました。しかし、携帯電話のマーケットに合わせて、自社のリソースであるコンピューター開発の技術を加工したことがスマホ市場の開拓となりました。
例えば、既存ビジネスで成功した後、そのビジネスのコンサルティングを始める企業は多いです。今持っているノウハウを、業界のサポートに役立てることで新規事業になるケースです。これは個人ビジネスでは最も多い業態転換の一つだと言えます。
この辺りは詳しくはイノベーション、ブルーオーシャン戦略、ピボット戦略なども参考にしてください。
商品企画の切り口(4)模倣
最も簡単な商品企画は、その市場で売れている商品を模倣することです。新規起業の人が最も入りやすいパターンと言えます。また、フロントエンド商品のヒットに恵まれない企業もこれをやる価値が大いにあります。
もちろん、完全なパクリではなく、グレードアップが必要です。現在の売れている商品の不満点を改善することで、グレードアップした売れ筋商品を企画できます。人気商品は例えば以下の方法で分かります。
・同じ市場の成功店舗で最も在庫が積まれている商品
・同じ市場の売上ランキングの共通する商品の要素
・同じ市場で最も客数の多い商品の人気要素
これらは競合リサーチの際に理解できます。
ストアコンパリゾン(競合店調査)についても参考にしてください。
■商品企画・開発のプロセス・フロー
さて、商品の切り口の方向性が理解できた上で、早速、商品企画のプロセスに入っていきます。
(1)自社・自分のリサーチ
まず最初に行うのが、自社のリサーチです。この段階では、自社(自分)はどのようなビジネスモデルなのか?なんのリソースを持っているのか?コアは何か?なぜビジネスをするのか?どんな成功事例を持っているのか?と言ったことをリストアップしていきます。
起業段階の人は棚卸しの方法についても参考にしてください。
(2)マーケットのリサーチ
次に既存客、あるいは、これから入るマーケットの顧客ニーズを調査します。
・何に困っているのか?
・既存市場(他社・他者)の製品サービスに対して、どんな不満を持っているのか?
・なぜ当社の製品を選んでいるのか?
・購買頻度が高く、購買金額が高い顧客層の共通点は何か?
・問題を解決するのに、どんな行動をしているか?
・問題を解決するのに、どれだけお金と時間をかけているか?
ということを調べます。新規事業や起業の場合は、「こういう人がこういうことに困っているかも?」という仮説を立てて、実態調査をします。
(3)競合のリサーチ
次に競合調査です。競合商品の売れ筋は何か?逆に、競合に対しての顧客の不満は何か?改善点はないか?という調査です。新規事業や、起業の場合、業態化できていない場合は、合わせて、業態知識を仕入れます。これも「模倣」の部分で触れているので割愛します。
(4)ボトルネックの特定
顧客が問題を解決するにあたって、何がボトルネックになってうまくいかないのか?を顧客から調査します。ボトルネックというのは、顧客が問題が解決しない理由、問題解決に失敗している部分、問題を解決するのに非効率的になっている部分のことです。
例えば、痩せたい人が痩せられない理由として、「運動が続かない」というボトルネックがあった、であるとか、クリエイターの人がビジネスをするのに「営業が苦手だ」というボトルネックがあった、であるなどです。
(5)魔法のアイデアの策定
そのボトルネックになっている部分を解決する、魔法のアイデアを考案します。例えば、ダイエットに失敗する人は「運動をしたくないからである」「できれば食べながら痩せたい」という魔法のようなことを顧客は望みます。そこで、「いちごみるくダイエット」という商品が生まれ、大ヒットしたことがあります。甘いものを食べながら痩せられるという、ボトルネックを解除したアイデアの例です。
魔法のアイデアを作るには、
「あなたの問題が解決しない原因は、実は〇〇なのです。それを解決するには、■■という特徴が必要です。」
という文章が必要です。
例えば、先ほどの例では、
「あなたが痩せられない原因は、辛い運動とおいしくないダイエット食品で、続けることができないからです。それを解決するには、”甘いものを食べて痩せられる”という特徴が必要です。」
と言った感じです。
(6)商品コンセプトの決定
アイデアが固まったら、それを人に伝えるために「言語化」する必要があります。それには、以下の言葉を埋める必要があります。
「■■という特徴のある△△(既存の競合の業種名・既存の商品カテゴリー名)」
先ほどの例では、「甘いものを食べるだけで痩せられるダイエットスイーツ」といった感じのコンセプトになるでしょう。
コンセプト作りには以下の記事も参考にしてください。
(7)プレゼンテーションの作成
今までの情報を合体させて、プレゼンテーションを作成します。
・このような人がこう言った問題で困っています
・その問題を解決するのに、このような行動をしています
・しかし、このようなボトルネックによりうまく言っていない人が多いようです
・その原因はこれなのです。
・その原因を取り除くには、このような特徴が必要です
・そこで、■■という特徴のある△△(商品)を作りました
こう言ったプレゼンテーションができれば、あとは組織であれば企画書に落としていきますし、個人であれば、セールスレターを作成します。
(8)テスト販売
セールスレターができたら、テスト販売のチラシやランディングページを作り、そこへアクセスを流してテスト販売を実施していきます。その市場によって数字は違いますが、最低限の成約率が出ればオッケーです。
以上が、商品企画のプロセスになります。
■商品企画の例
・アップルiMacのボトルネック解除の例
どのようなボトルネックを解除して商品の魅力を作っているかは、商品の広告を見ればよくわかります。代表例として、マーケティングに優れた会社、アップル社のiMac発売時のCMをごらんください。
ここであげているボトルネック解除は
・複雑なパソコンのイメージから、シンプルで使いやすいiMac
・複雑だったインターネット接続が一瞬でできる
・価格はピザを買うより安い
と言った点です。
見事に、顧客のニーズはもちろん、従来品のボトルネックを解除しています。
■商品企画書の作り方とテンプレート
プロセスに沿ってまとまったアイデアを商品企画書にまとめていきましょう。
商品企画書は以下の項目を入れていきます。
<商品企画書の作り方>
・Why(なぜやるのか?)
社内のプレゼンテーションの場合、なぜ自社がこの商品企画を実施する必要があるのか?その背景を説明します。自社のビジネスモデルや強み、自社の顧客にどのような関係性があるのか?ということです。何が自社の課題なのかを浮き彫りにする必要性があります。
・Where(どの市場に向けたものか?)
なんの市場に入っていくのか?市場規模、地域、商圏人口、競合数、競合に対しての支持人口など、データを示してその市場性を明確にします。
・Whom(誰がターゲットか?)
その市場の中で、どんなことに困っているユーザーがターゲットなのか?どんなニーズがあるのか?どんな部分でユーザーが失敗している、解決できないでいるのか?アンケート調査などを示してニーズの妥当性を明確にします。
・What(何をするのか?)
そのニーズに対して、どんな解決アイデアを持った商品企画なのか?イメージと言葉で伝えます。そのほか、特徴、顧客メリットなど詳細を伝えます。
・Who(誰がやるのか?)
実施する組織、ビジネスパートナー、商品供給者、仕入先、商品開発パートナー、販売パートナーなど、誰がどのように機能することで実現するのかを明確にします。
・When(いつやるのか?)
スケジュールをどうするのか?開発スケジュール、テスト販売などいつやるのかを明確にしていきます。
・How to(どうやってやるのか?)
生産計画、販売計画など、実施手段を明確にしていきます。
・How much(いくらかかるのか?)
商品開発、マーケティングなどにどれだけの予算が必要なのか?を明確にします。また、販売時の売り上げ計画、収支計画を作成します。
<商品企画書のテンプレート>
・bizocean
https://www.bizocean.jp/doc/category/147/
<企画書の例>
・これがプロの企画書だ!
https://bb-wave.biglobe.ne.jp/pre/kikakusyo/
<企画書で使えるデータ>
・生活総研
http://seikatsusoken.jp/teiten/
・矢野経済研究所
http://www.yano.co.jp
・総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/
・調査のチカラ
http://chosa.itmedia.co.jp
■商品企画が学べる本
・インサイト
顧客の本音のことを「インサイト」と言います。顧客の本音を見つける方法、そのインサイトを生かした商品作りについて学べる本です。
・BMR
BMRはBasic Marketing Relationsの略。新商品を企画して開発を進めていくためのマーケティングのプロモーション部分ではなく、商品企画に焦点を当てた書籍です。簡単な本ではないですが、事例が豊富でよく理解できると思います。
■商品企画のまとめ
商品企画は「誰が」「どうなる」商品なのか?ということを説明できるようにすることです。
そのために必要なのはリサーチです。そしてその中で、ボトルネックになっている点を改善するアイデアを見つけることです。
ぜひ、「プチ」イノベーションを生み出していってください。