こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi)
クリティカルシンキング(批判的思考)は今ではビジネスマンで知らない人はいないであろう、基本的なスキルです。
今では一部の高校でもクリティカルシンキング・ロジカルシンキングの教科書が導入されているんですよね。知ってましたか?
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2012年(平成24年)6月4日、文部科学大臣平野博文は「社会の期待に応える教育改革の推進」で批判的思考を重視した改革を提唱し、大学入試などでへの導入が提案された。また平成24年9月7日の中央教育審議会高等学校教育部会で京都大学大学院(教育認知心理学)教授の楠見孝は批判的思考を「高校生が身につけておくべき最も重要なもの」とした。
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世界の大企業が加盟する世界経済フォーラムでも2020年に重要なビジネススキル第二位になっているそうです。
なぜクリティカルシンキングが重要視されているかといえば、今までの時代は組織の中で「決まったことを正確にできる人間」が求められていたわけですが、これからの時代は真逆で、「自分の頭で考え、最適解を出せる人間」が必要だからです。
そもそも、思考に誤りがあれば、行動も間違っているため、結果も悪くなります。
行動よりも、思考の方が先にあるため、物事がうまくいかない原因の大半を占めるのが、論理的に思考できないことにあるということがわかります。トンチンカンな思考によって自滅していくのが敗北の常なのです。
それだけ思考法は重要なわけです。
にも関わらず、いまだにこういう考えをしている大人がいるんですよね。
- 自分の考えは正しい
- 批判をするのは良くないこと
- すごい人が言ってるから正解だ
- みんなが言っていれば正解だ
- 常識的に考えると〜
分析ができなければ、軌道修正ができないということなので、基本的に何をやってもうまくいく可能性は低いわけです。
だから、過去の常識を信じていたり、インフルエンサーの誘導を鵜呑みにしたり、コロコロ変わるポジショントークに踊らされたり、しまいにはスピリチュアルに走ってしまったりするわけで。
誤った論理、誤った信念を信じているから現実が失敗、あるいは問題があるということに気がつかなければ、問題は解決できません。
今回は、教科書の勉強は学校や書籍に任せて、実践的に使えるクリティカルシンキングをコンサルの立場でお伝えしていきます。一生物のスキルですから、読んで「へー」で終わらずに実践をしましょう。
Contents
■クリティカルシンキング(批判的思考)の意味とは?
・クリティカルシンキングとは?
クリティカルシンキングとは、物事の前提を疑うことで最適解を導き出すための思考法です。
ロジカルシンキング(論理的思考)が有名ですが、ロジカルシンキングだけでは前提条件が間違っていれば、間違った結論になることが問題なんですね。
例えば、「最近、売上が落ちている。競合店が増えたからだ。ならば、他店にないサービスを実施しよう」と言った論理。一見して、正しく聞こえるかもしれません。
まず事実の把握として「売上減少」という事象を見て、次に解釈として「競合店が増えている」という事象を理由として上げ、結論として「競合店にないサービスの実施」と言った具合です。
しかし、問題と結論の因果関係が曖昧です。これが論理的思考だけを使った場合に限界があるということ。
前提が正しいという中で思考を進めていくと本質を見失ったり、誤った条件を加えてしまったりと、うまく論理展開ができないわけです。
そこで必要なのが、クリティカルシンキング(批判的思考)なのです。
売上が落ちた要因は、競合店の出現のような外部要因だけではなく内部要因もあるでしょうし、競合店にないサービスや付加価値が必ずしも売上上昇に貢献するとは限りません。もっといえば、何をすればどの程度の売り上げ上昇ができるのか?売上の改善とは、いくらを指すのか?そもそも売り上げではなく、利益を上げたいのではないでしょうか?
といった具合に、出た結論に対して、様々な角度で検証をすること、前提を疑うこと、目的を意識することなどによって、問題の本質をクリアにしていくことができるわけです。
・批判の本質とは?
「批判的」というと、ネガティブなイメージを持つ人が多いですが、本来の批判とは客観的な視点を持つために、
- 不足している「モレ」
- 重複している「ダブり」
- 結論に当てはまらない「例外」
- 別の「可能性」
- 別の「根拠」
- 目的との「整合性」
と言った、矛盾点を様々な角度で検証することで、論理を確実なものにするために必要な要素なのです。
根拠や論理がなく、他人の悪口を言ったり、口汚い言葉で罵る、責めるようなことは批判ではなく非難と言います。
・論理とは?
「それは論理的だ」「論理にかなってない」などと言いますが、そもそも「論理」ってなんだ?ことですよね。
批判的思考は、最適解である論理を導くためにあるわけですが、なぜ論理的にしなければいけないのか?
論理とは、調べるとこうですね。
考えや議論などを進めていく筋道。思考や論証の組み立て。思考の妥当性が保証される法則や形式。
つまり、思考の「組み立て方」「やり方」のことを論理と言います。
論理というのは、「こうだったら、こうなる」「こういう条件であれば、このような結果が得られる」という妥当性のあるものです。
一方で「理屈」という言葉がありますが、理屈はこうあります。
無理につじつまを合わせた論理。こじつけの理論。
この意味で使われることが多いかと思いますが、つまり、「理屈」の「屈」という漢字は、折れ曲がるという意味になりますが、無理に捻じ曲げたということですね。
ビジネスシーンにおいては、すべては科学でなければいけないわけです。科学とは再現性が必要ということ。自分の都合で捻じ曲げた理屈を持っていても、うまくいかなくて当然なのです。
なので、「論理的」でなければいけない。そのために、本質まで行くようにクリティカルに思考をして行く必要性もあるということです。
■クリティカルシンキング(批判的思考)の3つの基本
クリティカルシンキングのテクニックを学ぶ前に、基本的な姿勢として以下の3つが必要になります。
(1)そもそも目的は?
思考している最中に目的を見失うことが多々あります。それが最大の問題なのです。
目の前の問題を解決しようとするあまり、根本的な目的を見失ってしまう。
あるいは、希望的観測や、願望が入ってしまうという非論理的な思考展開をすると、目的はどこかへ消え去りますよね。
なので、クリティカルシンキングでは常に「そもそも」という思考を使い、当初の目的を意識しながら思考をしていく姿勢が大切です。
(2)誰もが思い込みがある前提
大前提として、自分自身も、議論する相手も、誰もが思い込みや思考グセがあるということを常に念頭におくことが大事です。
コンサルタントならば情報を集める際に、様々な関係者に質問をしますが、その回答をそのまま鵜呑みにすることは絶対にありません。あくまで、人は色眼鏡をかけて解釈をしているわけなので、「この人はそう見えているのだな」ということであり、客観的事実である数字など以外は、そのまま鵜呑みにしてはいけないのです。数字ですら解釈が間違うこともありますから。鵜呑みにはできません。
もちろんそれは、他者の解釈だけではなく、常識などに対してもそうですし、自分自身に対してもそうです。自分が思い込みにハマっていないか?という視点はとても重要になります。
(3)問い続ける
最後に、「問いをやめない」ということです。
考えきれない人は、少し考えて壁にぶち当たるとすぐ思考をやめてしまったり、結論が出た時点で思考を止めてしまいます。
そうではなく、それでなんなのか?その答えにどういう意味があるのか?なぜそうなるのか?本当にそうなのか?と言った問いをやめずに、本質に行き着く必要があります。
■クリティカルシンキングができない人の特徴
ここまで聞けばわかるように、頭が硬い人はこう言った思考法ができないわけですが、一番、向いていないのは、課題中心的ではなく、自己中心的に物事を考えがちの人です。
課題を中心に考えていれば、その問題が解決すること、その課題が良くなることに対して、思考し、議論することができます。
しかし、課題中心ではない人、つまり、自己中心的な状態というのは、課題と自分を分離できないので、人に意見を言われたら「カチン」と来てしまったりするわけです。
自分が非難されていると思い込んで擁護に回ったりすると、もう議論どころではなくなります。
あくまで課題解決について話し合わないといけない、考えないといけないわけなので、自分のことは置いておかないといけないわけです。
この段階の人は、ビジネス以前に、7つの習慣など基本的な人としてのあり方から学んだほうがいいでしょうね。その考えで万が一、成功してしまったら、暴君と化してしまいますから(笑)
■クリティカルシンキングとロジカルシンキング(論理的思考)の違いと使い方の具体例
では具体的な使い方です。
今回の例では、あなたがお店を経営していて、売上が減少していることに困っているという課題を設定して考えて行きましょう。
STEP1:ロジカルシンキングで情報を整理・分類する
・MECE
まず最初に必要なのは現状の把握です。
この際、MECEで考えます。MECE(ミーシー)とは、「もれなく・ダブりなく」という意味です。
考えるべき要素が漏れていた場合、結論に誤りが出ますし、同じ要素が複数あった場合も、話がややこしくなってしまうため、「もれなく・ダブりなく」要素を出すことが先決になります。
・ロジックツリー
MECEで情報整理をする際に便利なツールとして、ロジックツリーがあります。
頭の中で考えていても、漏れやダブりを発見しにくいため、実際にツリー状にして書き出すのです。
この場合、課題として「売上減少」という項目を最初に書き出します。
次に、その要因となる要素を書き出します。
この際、「売上」を構成している要素に沿って書き出すことが大事です。
この話では「売上」の話をしているので、数字の話です。
その数字を構成する要素は「お客さんの人数」と「顧客単価」と「利用回数」と言ったことになるはずです。
新規のお客さんが減ってるのか?
それとも客単価が減っているのか?
リピーターついていないのか?
それとも、すべての要因に当てはまるのか?
「売上減少」の要素を書き出して行きます。
そこからさらに細分化して、「お客さんが減っている」という要素の、さらに要素は何か?細分化して情報を集めます。
この場合、「宣伝効果が悪くなってきた」「リピーターが増えていかない」「競合店が近所にできた」と言った要素としました。
STEP2:ロジカルシンキングで仮説を立てる
情報が出揃ったら、各項目ごとに結論(対処法)を導き出して行きます。
結論に対して課題が出てきたら、またそれも検討します。
その際にどのように思考して行くのかというと、演繹法と帰納法というのがポピュラーです。
・演繹法の例
演繹法とは、「〇〇だから、△△である」という論理をつなげて行って、結論を導き出します。普遍的な大前提・原理原則と、観察した普遍的な事実の2つから考えます。
「スギムーは人間である→人間はお腹が空く→スギムーはお腹が空く」
と言った具合ですね。
例えば「客数が減っている」という事象の結論を導き出すのに対して、以下の絶対的な事実を使うとします。
1.「新規顧客を獲得するのにコストを支払っていては利益が出ない(新規客だけで客数を増やすことは不可能である)」
2.「当店のリピート率は昨年対比でマイナス30%である」
であれば、客数が減っている要因は
結論=リピーターが減っているから売上減少につながる客数現象が生じている
という仮説が立ちます。
次は「なぜリピーターが増えないのか?」と、論理を掘り下げて行きます。
例えば、その際に以下の2つの絶対的な事実を使うとします。
1.「顧客満足度が極端に低ければ、顧客はリピートしない」
2.「アンケート調査で、顧客満足度が作対比で低下していることが分かった」
結論=「当店のリピーター低下の問題は顧客満足度低下にある」
ここで重要なのは絶対的に事実を使うことです。論理とは、例外があってはいけません。
なので、「ビジネスの原理原則」「数字」と言ったものを使用します。主観では「理屈」になってしまいますからね。
・帰納法の例
次に帰納法です。帰納法とは、様々な事例や傾向をまとめて結論に導きます。
「スギムーはお腹が空いた。壇蜜もお腹が空いた。あなたもお腹が空いた。つまり、人間はお腹が空く」
と言った具合です。
事例が少ないと、間違った結論に行きがちですから注意しましょう。
例えば、「売上減少」という問題に対して、リピートも増えず、集客も悪くなっていて、あらゆる問題が出ているので、思い切ってコンセプトをリニューアルをしよう、という方向性で考えるとします。
その際、顧客にアンケートをとって情報を集めたとします。すると
1.優良顧客Aさん、Bさん、Cさんは、Dという商品を毎週買っている
2.よって、当社の主力商品はDを主軸に店舗リニューアルをすべきである
という仮説が立ちますね。
帰納法は、様々な事例の共通項をもとにして思考をしますので、事例を多く、そして共通点は何かということが大事です。
演繹法と帰納法、どちらが良いということはなく、ケースに応じて使い分けて、演繹法と帰納法を繰り返し使っていくというのが実際のところです。
STEP3:クリティカルシンキングで前提を疑う
そして出てきた結論に対して、クリティカルシンキングで前提を疑って行きます。
・So what?(で、なんなの?)
・Why?(なんで?)
・True?(本当に?)
と言った疑問を投げかけます。
「顧客満足度の低下はスタッフのレベルの低下である。よって、スタッフ教育を徹底的に行う」
と言った結論に対して、
- そもそも、利益を上げるのが目的だよね?
- そもそも、スタッフ教育がどう利益向上に直結するの?
- アンケートを見ると来たい時間帯に予約が取れないという不満が多いけど、本当にスタッフの問題なの?
などの疑問を投げかけることで、結論を客観的に見ていくことができるわけです。
■クリティカルシンキングの3つのトレーニング方法
では最後に、クリティカルシンキングを鍛えるとっておきの方法を教えましょう。
・アウトプットの前にインプットをする
自分の意見が持てないであるとか、人の意見に流されてしまう、考えきれないと言う問題は、インプット不足に他なりません。
考えると言うことの本質は、「集めた情報を組み立てる」と言うことです。
先ほどの演繹法や帰納法についても、ビジネスの原理原則という情報、その情報がどの局面で使えるかという知恵、他社への質問、数値的データの収集といった、情報収集によって成り立っていることに注目してください。
それらの情報をいかに組み立てるかということに他ならないのです。
なので、正しい意見を導けないのは、正しいインプットがないから。あるいはインプット不足のために起きていることです。
考える前に命題に対しての、情報を集めることが重要です。
・主張に対して批判をする
まず、何かの主張を聞いたら、批判をする癖をつけます。
批判というのは、何度もいうように文句をいうことではありません。矛盾点に対して客観的事実を投げかけることです。やんややんや言っても説得力がないですからね。
例えば、ニュースを見て意見を言う人がいたら、その意見に対して、「本当に?」「なんで?」そもそもこう言うことじゃ?」と言った反論をして見ることです。書籍やブログなどでもいいですね。
その際、自分にインプットが足りなければ、情報収集をすることになります。それが思考力がつく要因です。
例えば、「ブランディングを先行してしてしまえば、どんなものでも売れる」と言う主張をしている本があったとします。それに対して、「そもそも顧客は商品価値を買っているのだから、最初に必要なのはイメージより価値でしょ」と反論ができます。
「批判をする人ってよくないよね」
と言う主張に対して、「あなたは批判をしている人を批判しているよね?」
と言う矛盾点をつくことができます。
そんな具合で、常に矛盾を見つけることです。
・常にフレームワークで仮説を立てる
次に、自分の頭で情報を組み立てるのではなく、フレームワークを用いる癖をつけましょう。
例えば、プレゼンテーションならばPREPの法則を使って話すこと。
・Point(結論)
・Reason(理由)
・Evidence(証拠)
・Point(結論)
結論はこうです。なぜなら〜
と言う言い方をする。
文章を書くならば、「PASONA」
戦略を考えるなら「3C」
マーケティングを考えるなら「4P/4C」
ビジネスモデルを作るなら「ビジネスモデルキャンバス」
他にも多くのフレームワークがあります。
そうしたものを使うようにしてください。このブログでも色々と紹介しています。
■クリティカルシンキングの本
学校の教科書にも使われているのがこちら。
元祖。コンサルタントの教科書はこちら。
■クリティカルシンキングのまとめ
というわけで少し長くなりましたが、一生物のスキルであるクリティカルシンキングについてざっとお話ししました。
僕がクリティカルシンキングに出会ったときには、ひねくれた子供時代を過ごしたため(笑)普段からやっていることに過ぎなかったので全く驚きはありませんでしたが。
素直な人ほど、情報を疑わず、盲信し、結果が悪くなってしまうケースが多いです。
真実を生きる覚悟があるならば、
前提を疑う。
ニュースを疑う。
教科書を疑う。
理想を疑う。
先生を、有名人を、常識を、業界の当たり前を、自分の中の信念を。
徹底的に疑えるようになってください。
真実の世界のために、信念すら捨てられる者だけが、光を見ることができます。