マーケティング

飲食店を開業してからでは遅い!開業前に確認すべき4つの基本

こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi

「飲食店を開業する際に気をつけなければいけないポイントはなんですか?」

という質問があったのでお答えしますね。

多くの場合、「開業」というと、開業手続きなどの届け出や、資格の取得、賃貸契約や店舗の内装、厨房の器具、それからメニュー開発といったことばかりに注目してしまいますよね。

しかし、肝心の「お客さん」についてはどうでしょうか?

  • その町には誰がいて、どのようなお店の利用のされ方をするのでしょうか?
  • お客さんは、歩きで来るのでしょうか?車でしょうか?
  • お客さんは、早く食べたいのでしょうか?ゆっくり食べたいのでしょうか?
  • お客さんは、どういう目的で来店されるのでしょう?
  • それに適した商品や、価格や、立地、オペレーションはどういったものでしょう?

そういったことを考えてスタートしなければ、スタート時点で最初から失敗することが確実だったりします。

「マーケティングをすればどんなお店も大成功!」
「この一枚の魔法のハガキさえ送れば!」
「このユニークなチラシで圧倒的に集客!」

のようなメッセージが溢れている本屋さんのビジネス書や、セミナー情報で解決したでしょうか?
実際、どうやっても無理な形でスタートしていれば、ハガキやチラシでどうにかなるものではありません。

決定的な4つの問題によって最初から失敗が決定していることがあるのです。
これらの問題を無視すると、何をしてもうまくいかないという状況になってしまうので、開業時にこれだけは気をつけてほしいという、集客といったことではない、本当のマーケティングについてお話しします。

珍しく特定の業界に特化した記事ですが、リアルビジネスの考え方は共通なので、他の業界の方にも読んでいただければこれ幸い。


■飲食店の開業で失敗する例

例えば、こんなカフェレストランを開業したAさん。

立地は郊外の小さい駅の駅前で、10人も入ればいっぱいの小さなお店です。
そこはいつも満席で、だいたい入れません。
駐車スペースは4台程度。
車で来る人と、歩きの人の両方がいるような立地です。
価格帯は平均単価が1500円と言ったところです。

満席ならば、さぞ儲かっているかというと全く苦しい経営だそうです。

なぜでしょうか?

理由は回転率です。

カフェレストランの顧客の滞在時間は1時間〜2時間。

ランチの単価が1000円として、一回転しかできずに、最大10人で1万円の売上。
ティータイムとディナーで2回転しても、最大30人。
1日最大売上が45000円と決まってしまいます。

レストランという業態であれば、お客さんは「ゆっくり食べて話す」という目的で来るわけですから、回転率が悪い。
その分、席数を多く作る必要があります。
ファミレスがなぜあんなに大きいのか?というのはこのためです。

小さいお店であれば、何回転もできるファストフードという業態を取る必要があります。
この状態から業績改善をするには、結構な工夫が必要になることがわかります。

■飲食店の開業が失敗するのは組み合わせの問題

いろんな失敗のケースがありますが、
絶対にうまくいかないというのは、
例のように、市場と業態の組み合わせが失敗しているケースです。

  • 席数が少ないのにゆっくり食べるテーブル型レストラン
  • ランチ需要のファストフードを住宅街にオープンする
  • 郊外のロードサイド店舗で駐車場が小さすぎる

例えばこのような組み合わせのズレがある場合、

  • ニーズがなく集客できない
  • 物理的に客数が稼げない
  • 物理的に回転率が上がらない
  • 満席でも利益が上がらない

といったことに陥り、集客や単価アップと言った改善レベルではどうにもならない場合が多いため、組み合わせをスタート段階で注意しなければなりません。

スタート時に気をつけるべきポイントは以下の4つになります。

■飲食店の開業で失敗を最小限にする4つの視点

(1)業態の決め方

飲食店における中小企業・個人が展開できる業態の基本は以下の3つが主になります。

1.ファストフード

短時間で食事をするタイプの業態です。

ファストフードといえば、ハンバーガー、牛丼といったイメージがありますが、早く食べるというニーズに応えられるものであればどんなメニューでもファストフードになります。例えば

・ラーメン
・うどん
・蕎麦
・サラダバー
・たこ焼き
・クレープ
・おにぎり
・スープ
・カツ丼
・カレー
・中華まん

この業態は、早く食事をしたいというニーズがある場所でのみ展開が可能です。
例えば、

・オフィス周辺
・商業施設内
・駅ナカ
・駅前

と言った、人が多いエリアに出店をし、回転率を上げることが重要になります。
車での来店が基本の地域であれば、席数に対応する駐車スペースが必要です。レストラン同様に駐車スペースが客数の最大値になってきます。

価格帯は日常的な用途のものであれば安いものが基本ですが、観光客、お出かけで来る客層の場合は、市場価格は上昇します。

2.テイクアウト

短時間で持ち帰って飲食するという形式の業態です。

厳密にはファストフードの提供方式が異なるだけですが、小規模で展開しやすい1つにテイクアウト販売があります。パン、ケーキ、弁当、惣菜、デリバリー、スーパー、コンビニといったものです。

飲食関連の市場は大きく3種類。

・外食=お店で作ったものをお店で食べる
・中食=お店で作ったものを家で食べる
・自炊=自分で作って自分で食べるための材料

テイクアウトは中食ということです。

この業態の主な利用者は以下になるでしょう。

・忙しい主婦
・独身者
・高齢者

上記のいずれかの市場のあるエリアで展開が可能です。

中食で重要なのは、1品目や、1品種でお客さんに認識されるということ。

例えば、「お弁当を買いに」「ケーキを買いに」「パンを」といった『品種』で理解されるため、その専門店という認知がされる必要があります。

あるいは「ピザ」「コロッケ」「カツ」「唐揚げ」のような『品目』で理解されて、その品目を買いに来るというのが目的になるので、全面に押し出す品目が決まっているお店の方が認知を取りやすくなります。

漠然と「総菜」「弁当」のようなテーマだとスーパーやコンビニと被るため競合が多くなるので注意。

基本的に回転率が高いので、小さい売り場面積、小さい駐車スペースで運用が可能ですが、パン屋さんのような商品を並べる形式の店舗は小売店と同じく、売り場面積と駐車スペースで売り上げが決定される郊外の単独店もあり得ます。

3.テーブル型レストラン

ゆっくり座って話して食べるという形式の業態です。

回転率が悪いので、高級店でない場合は、席数が多くなければ成り立ちにくい形式でもあります。
レストラン、コーヒーショップ、居酒屋、といった業種が多く、ビジネスモデルは合計購入額をアップすることで成り立つので、料理のみ、単品という形式ではうまく行きにくいでしょう。

この業態は、「ゆっくり座って人と話して食べたい」というニーズがあるエリアで成り立ちます。

また、車利用が基本のエリアでは、駐車スペースと席数の関係で、物理的に客数が決定されます。

先ほどいったように回転率が悪いので、席数が少ないと客数をさばくことが出来ません。郊外の小さいレストランで経営者が

「予約さえしてもらえれば、準備もできるし、時間をずらして対応できるのに」

といった話がたまにありますが、当然ですが基本的に飲食のニーズが発生する時間帯は同じです。ランチの時間、ディナーの時間は同じような時間帯に集中するわけなので、その時点での駐車可能スペースが客数の限界となります。この点は気をつける必要があります。

このように、出店するエリア、ニーズによって選択する業態や、席数、駐車スペースなどを間違えると物理的に経営が苦しくなるので、注意が必要です。

(2)昼間人口と夜間人口で地域特性を知る

昼間に人口が増えるエリアなのか?夜間に人口が増えるエリアなのか?といったことで、選択する業態、品種が変わって来る可能性も十分にあります。つまり、そのエリアに外部から入って来る人が多いのか?出て行く人が多いのか?です。

その商圏が、昼間人口が多い場合は以下のようなエリアです。

・オフィスが多い
・商業施設がある
・観光地がある
・都市の駅周辺

こういった場合は、インバウンド客(入って来る人)が多いということ。

その場合は、オフィス周辺でファストフードのランチ需要が生まれたり、駅周辺でお酒の需要が生まれたりするでしょうし、外からきた人向けに個性的なお店が受け入れやすい傾向にあるかと思います。

逆に夜間人口が多い場合は、その地域から外に出る人が多いわけなので、地元客をターゲットにする必要が出てきたりしますよね。日常的に使いやすいお店が求められます。

例えば、おにぎり専門店を、昼間人口の多い駅周辺にオープンするのは問題ないですが、住宅街にオープンしても早く食べたいというニーズがないことは予想できます。

「この地域には他にはない種類だから」という理由だけで業態、品種を選択するとこのようなズレが生じる可能性があるので注意が必要です。

(3)支持人口を調べる

次に考えるべきは、競合の多さです。
同じ商圏内に、同じ対象者の、同じ利用用途の競合店があれば、その数が多ければ多いほど、自店舗のマーケットは縮小します。

市場調査の際に、商圏人口を調査したり、店舗前の交通量を調査することは多いと思いますが、支持人口も考慮しなければいけません。

商圏人口とは半径何キロ以内の人口といったことで、支持人口はその数字を競合店舗数で割った数です。

まず、その地域の人口密度を調べます。
人口密度によって、半径何キロが商圏なのかが決まってきます。

ここでは簡単に、都内の中心部なら1キロ、巨大都市なら半径2キロ、地方都市なら半径3キロとしておきます。詳しく別の記事で。

駅前の出店であれば駅の乗降客数の1割を支持人口と考えて良いでしょう。

自分のお店の出店予定地の半径○キロ圏内の人口を調べます。役所などで調べられます。
ここでは仮に地方都市で3キロ圏内とし、商圏人口が1万人だったとしましょう。

例えば、テーブル型レストランが1万人の商圏内に5店舗あったとすれば、

10000÷5=2000人

ということになります。
この数字が多いところ、つまり競合が少ない場所に出店する必要があります。

もちろん、ニーズがあるのに、競合が全くいないという品種、品目特化の専門店といった業態を変えることで支持人口を増やすことができるわけなので、スタート時にこれを考えない手はありません。この辺は専門のコンサル会社に調査依頼をすると良いです。

こんなデータもあるみたい。

(4)TPOSを用意する

エリアの特性や支持人口を把握して行くことで、TPOSを明確にして行くことができます。

・Time=いつ?
・Place=どこで?
・Occasion=どんな場合に?
・Life Style=どんな人が?

使うお店なのか?ということです。

例えば、

・サラリーマンが会社の周辺でランチ時にさっと食べる目的で利用する〇〇店
・働いている女性が仕事帰りに駅前でおかずを買って帰る〇〇店

といった言葉にできます。

コンセプトのようにカッコつけたキャッチコピーなどではなく、事実を並べて誰が、いつ、どこで、どういう目的で利用するお店なのか?ということを言い表し、その内容に沿ったお店作り、価格、メニューといったことを決定して行く必要があります。

■飲食店開業のまとめ

  • お客さんの滞在時間による回転率:早く食べるのかゆっくり食べるのか?
  • 席数や駐車スペースによる客数
  • 地域特性がインバウンドなのか地域客なのかどうか
  • 支持人口が多いかどうか?
  • 業態、品種、品目の競合数はどうか?
  • TPOSは?

こういったことを最初に詰めて考えておけば、その地域にこの業態、あるいは品種、あるいは品目を扱っているのは当店だけ。
というナンバーワンからビジネスをスタートできます。

また、組み合わせのトンチンカンもなく無理な業態を続ける必要がなくなります。

ぜひ、参考にしてください。

すでにスタートしている人も無理ゲーになっている場合は、業態転換を考えて行きましょう。

 

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