洞察力と観察力の意味とは?|洞察力を鍛えるコツと仕事に活かす方法

こんにちは。スギムーです。(@sugimuratakashi

もし、経営やコンサルティングにおいて、1つだけ必要な資質が何かと聞かれれば、それは「物事をありのまま見ることができる観察力」と答えます。

知識、ノウハウは勉強や経験を積めばいくらでも身につきますが、観察をするというのは能力だけではなく、『事実を曲解しない態度』が求められます。

認知を歪めてしまえば、つまり、物事を正しく見れなければ、その後の思考も、判断も、行動も、全てが間違うことになるわけで、そのスタートを担っているのは、常に「観察」なわけです。

名探偵シャーロック・ホームズは、「ボヘミアの醜聞」で、常に推理を魔法のように当ててしまうホームズに対して疑問を抱く相棒ワトソンに対して、こんなアドバイスを言います。

ーー
「君は見ているが、観察していない。その差は明白だ。」
ーー

僕の生きる態度を決められたと言ってもいいほど影響を受けた言葉の一つです。この言葉の深さは測りし得ないものがあります。どう見るかが全ての始まりなわけで、これほど深い言葉もないと思うわけですよ。

ホームズはワトソンに、いつも登ってくる階段の段数が何段なのかを聞くのですが、当然、ワトソンはわかりません。それが観察と見るだけの違いであると指摘します。探偵ものの話は個人的に一番好きなのですが、個人的には探偵の観察眼ほど勉強になるものはないです。最近ではHuluのオリジナルドラマのミスシャーロックが良かったですね。上記の名言も登場しました。

「みる」と言っても日本語でも、「見る・観る・診る・看る」といろんな文字があるように、見るというのは視覚的に見ることだけではないわけです。

正しくものを見ることができれば、最終的に本質を見抜くことができます。本質を見抜くことは「洞察」と言います。つまり、「観察」は「洞察」に至るわけです。

今回は、ビジネスシーンにおいて、どのように観察と洞察を使い、仕事に生かして行くのか?どう観察力と洞察力を鍛えていけばいいのか?ということをやっていきます。

■洞察力と観察力の違い

「観察」の意味は辞書によると「事物の現象を自然の状態のまま客観的に見ること。」です。
英語では「observe」ですね。「オブザーバー」という言葉を聞きますが、「立会人」や「傍聴者」など、観察するだけの人を指します。

「洞察」の意味は辞書では「(物事の本質を)見通すこと。見抜くこと。」とあります。英語では、「insight」と言います。「インサイト」は、マーケティングの世界では、「顧客インサイト」などと使われ、顧客の本音、なぜ買っているのかという本当の理由など、「実際のところ」について指す言葉ですね。

つまり、観察力とは、「目に見える事象を捉える能力」であり、洞察力とは、「目に見えない本質を読み解く能力」ということになります。

■洞察力と観察力がなければ判断も分析もできない

例えば、女性がこちらを見ているという事象があった場合、「こっちを見ている」ということを観察し、「お?これは俺に惚れてるな?」と洞察を読み解いたとしましょう。

しかし、実際は相手は自分の後ろにあった看板に目をやっていた。なんてことは、1日のうちの3回くらいは誰もがあると思います。(そんなはずはない)

そんな感じで、誰もが常に観察をし、洞察をしているわけですが、こんな風に自分に都合良く物事を曲解していることが多々あります。

セールスをしたら相手が困っているだけなのに「悩んでいるのかな?」と洞察をして、「あと一押し!」と勘違いしたり、利益が出ないビジネスモデルが原因にもかかわらず、「客数が足りないんだ」と曲解し、「集客しなきゃ!」と誤った判断をしたり、彼氏が仕事のことで考え事をしているだけなのに、「黙っているのは自分のことが嫌なのかも?」と洞察をして、悲しくなってしまったり。

こうした、観察と洞察の間違いによって、あらゆる悲劇は起こっているわけです。

観察力と洞察力がなければ、分析ができず、物事の判断ができません。本当に、致命傷。ビジネスどころか人生レベルにおいて、本当に、危険なことなのです。

一刻も早く、観察と洞察のスキルを身につけるか、それらができるパートナーや専門家と組まないといけないと思います。でないと、間違い続けますから。

■観察力を仕事で活かす方法

では、具体的に、観察をどのようにして行うのか?イメージとしては、ビジネスシーンで業績の改善を行うために観察をしていくという設定で見ていきましょう。

・ありのままに見る

まず観察は「事物の現象を自然の状態のまま客観的に見ること。」ですから、観察の基本は、とにかく先入観や、解釈を置いておいて「事象をありのままに見る」という態度が必要です。

プライドとか、ハッタリとか、自分の希望とか、慢心とか、そう言ったややこしい感情はおいておくことが原則です。

どんなに絶望的な事態であっても、逆に楽観的な良い状態に見えたとしても、そこに感情を入れずに、事実だけを冷静に、客観的に、機械的に、見るのです。

ビジネスシーンに置き換えれば、ビジネスは目的が「利益獲得」である以上、利益は数字で表せるものなわけで、そうなればビジネスは全て数字で出来ていると言えます。ですから、ビジネスの場合は数字だけをまず客観的に把握するということから始まります。

経営レベルでは、

売上、原価、経費、粗利益、客数、広告費、反応率、成約率、顧客獲得コスト、顧客単価、利用回数、リピート率、回転率、席数、対応スタッフ数、駐車場台数、利用サイクル、利用時間帯、合計購入点数、etc…

全て数字なのです。

業務レベルでは、例えば営業ならば、リスト数、コール数、アポイント率、コールドリスト数、ホットリスト数、訪問件数、契約率、対応時間、営業人数、販売数、受注単価、などなど、全てが数字です。

そうした客観的事実である数字の把握から始まります。

それらの事実の中で問題を発見したり、フォーカスすべき箇所があれば、さらに細分化して数字以上の事実を見ていきます。

例えば、集客に問題があるならば、顧客データ、性別、年齢、住まい、職業、用途、交通手段、など顧客情報を見て行くこともあるかもしれませんし、一つの集客経路に絞り込んで見るならば、広告のリーチ数、予算、ターゲット、広告のクリエイティブのパターン、クリック率、CVR、と言ったデータを見ていく必要があるかもしれません。

例えば、リピートの部分を詳しく見ていくなら、顧客アンケートでサービス品質に対してどういう意見が多いのか、どういう顧客層がリピートしているのか?単価が高い人の傾向は?と言った、属性の分類を把握していく必要があるかもしれません。

いずれにしろ、自分の頭の中で考えたものではなく、「客観的事実」をありのままに見るということです。

・視点を増やし視野を広げる

次に、観察力が決まるのは、「視点の数」と「視野の広さ」です。そして、それらの質や深さが重要になります。

例えば、顧客の目線、競合の立場、従業員の立場、社長の立場、と言った視点の切り替え。

経営レベル、戦略レベル、部署レベル、業務レベル、と言った、それぞれの段階や役割による全体像の把握。

さらに、業務フローや、目的達成までの計画、リピートが起きるタイミングや紹介客をいただけるタイミングと言った、時系列の把握。

もっと言えば、接客時の一言でクロスセルによって売上をアップする、着ている服装によっての売り上げの違い、商品写真の見え方、メールの文章一つの違いによるクリック率の向上、ブログの書き方ひとつで変わるSEOの効果などの、詳細の把握。

視点の数、向き、深さ、段階、視野の広さ、狭さ、切り取り、長さ、などを増やしていくということが、観察には必要です。

観察力があるというのは、ただ細かいことを見るということでも当然なく、ただ実数を把握するというだけでもなく、目的に沿って必要な情報を見つける力なわけです。

どうでもいいことを細かく見る人はたくさんいますが、それは目的を見誤っている可能性が高いです。ビジネスなら利益に関することが最重要なわけで、利益に関する視点、視野を持たなければなりません。

・事実を分類する

ここまで出来たら、情報の分類です。観察した情報が散らばって置いてあっても、そこから本質を見抜く洞察に繋げていくには厄介な状態です。

ここまで便宜上、情報を分類しながら書いていますが、実際は日々色んな情報が集まってくるわけです。

様々な知識、読んだ本、今日のお客さん、今月のビジネスの数字、色んな情報があります。

それらをなるべく瞬時に分類する引き出しが必要です。

タンスの中に、上着のコーナー、下着のコーナーと、カテゴライズされているように、頭の中をクリアに保ってこそ、観察が冴えるわけです。

経営であれば、これは経費削減の情報なのか、新規客数の話なのか、リピート客数の話なのか、客単価の話なのか、利用回数の話なのか、改善レベル・改革レベル・革新レベルのどの話なのか、分類できなければいけません。

ここで役立つツールは以前紹介したMECE・ロジックツリーですね。

■洞察力を仕事で活かす方法

物事を改善していくために、観察によって得た情報をどのように洞察につなげていくのか?観察によって、客観的事実を様々な視点で獲得し、情報を分類できれば、洞察(本質を見抜く)のために分析をしていくという段階に入ります。